研究概要 |
脳内の神経回路がどのような仕組みによって情報処理を実現しているかを知ることは脳科学における重要な目標の一つである。この目標に向けて、本研究課題では、実験データ (多細胞同時計測データ、膜電位データ、カルシウムイメージングデータ等) から情報処理中の神経回路の振る舞いを同定するアルゴリズムを開発することを目的とする。 平成25年度は多細胞同時計測データから神経細胞間のシナプス結合を推定する手法の開発を行った。計測されたスパイクデータを積分発火型モデルによりモデル化し、最尤法を用いる事によってシナプス結合を推定するアルゴリズムを導出した。そして、我々の手法は既存手法 (Cross-Correlation法、Transfer Entropy法) よりも推定精度が向上することを確認した (Kobayashi and Kitano, Journal of Computational Neuroscience 2013)。次に、推定されたシナプス結合が統計的に有意に強いかどうかを判定する手法の開発に着手した。このような手法は、実際の実験データに適用する際に非常に重要になる。膜電位データの解析に関しては、状態空間モデル (Kobayashi, Shinomoto and Lansky, Neural Computation 2011) を用いてモルモット聴覚野から計測された膜電位データを解析し、聴覚刺激がシナプス入力へ与える影響を調べた。また、昆虫 (カイコガ) の嗅覚神経回路において神経細胞が嗅覚情報をどのように表現しているか調べた (Kobayashi, Namiki, Kanzaki, Kitano, Nisihkawa and Lansky, Brain Research 2013)。
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