研究領域 | マイクロエンドフェノタイプによる精神病態学の創出 |
研究課題/領域番号 |
25116501
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
南 雅文 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20243040)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抑うつ / 不安 / 分界条床核 / 腹側被蓋野 |
研究概要 |
我々はこれまでに、分界条床核2型神経細胞の活性化が嫌悪情動を惹起することを報告している。分界条床核2型神経細胞はコルチコトロピン放出因子(CRF)の刺激により活性化することも明らかにしているが、本年度の研究ではCRFによる2型神経細胞活性化が、アデニル酸シクラーゼーcAMPーPKA系の活性化によることを示し、嫌悪情動を惹起する2型神経細胞内の情報伝達機構を明らかにした。また、我々は、これまでに、分界条床核から腹側被蓋野に投射する神経が腹側被蓋野ドパミン神経の活動を調節する可能性を報告していることから、慢性疼痛や慢性ストレスが腹側被蓋野ドパミン神経活動に及ぼす影響を検討したところ、本来、報酬提示時に観察される腹側被蓋野ドパミン神経活動の亢進が、慢性疼痛モデル動物や慢性ストレス負荷動物では観察されないことが明らかとなった。ドパミン神経活動を調節する神経機構の変化、すなわち、分界条床核から腹側被蓋野にかけての神経回路あるいはその周辺の神経回路の変化が、うつ病のマイクロエンドフェノタイプとなる可能性が考えられる。この仮説を検証するためには慢性疼痛モデル動物や慢性ストレス負荷動物などの成獣のラット・マウス脳より作製した脳スライスを用いた電気生理学的手法による神経回路の詳細な解析が必要である。そのため、今年度は、成獣ラット脳由来スライスを用いた脳スライスパッチクランプによる電気生理学的解析手法の導入も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRFによる分界条床核2型神経細胞の活動亢進が、アデニル酸シクラーゼーcAMPーPKA系の活性化によることを示し、嫌悪情動あるいは抑うつ情動を惹起する2型神経細胞内の情報伝達機構を明らかにした。また、慢性疼痛や慢性ストレスが腹側被蓋野ドパミン神経活動に及ぼす影響を検討し、本来、報酬提示時に観察される腹側被蓋野ドパミン神経活動の亢進が、慢性疼痛モデル動物や慢性ストレス負荷動物では観察されないことが明らかとなった。ドパミン神経活動を調節する神経機構の変化、すなわち、分界条床核から腹側被蓋野にかけての神経回路あるいはその周辺の神経回路の変化が、うつ病のマイクロエンドフェノタイプとなる可能性を示唆する知見であると考えられる。さらに、この仮説を検証するために必要な成獣ラット脳由来スライスを用いた脳スライスパッチクランプによる電気生理学的解析手法の導入も行った。
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今後の研究の推進方策 |
慢性疼痛モデル動物や慢性ストレス負荷動物などの成獣のラット・マウス脳より作製した脳スライスを用いた電気生理学的手法により、分界条床核から腹側被蓋野にかけての神経回路あるいはその周辺の神経回路の変化、および細胞内情報伝達機構の変化を詳細に解析し、うつ病のマイクロエンドフェノタイプとなる神経回路変化を明らかにするとともに、うつ病の発症に関わる脳内メカニズムを明らかにする。
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