外的環境変化に対する大脳の遺伝子発現応答は認知プロセスと密接な関わりがあり、また、神経発達障害や精神疾患病態においては活動依存的な遺伝子発現調節の障害が示唆されている。このため刺激依存的な遺伝子発現プロファイリングを精度よく行うことは極めて重要である。本研究提案では、新奇環境経験によって活性化された大脳の神経細胞を細胞タイプ別に単離し、活性化神経細胞特異的なトランスクリプトーム解析を行うことを目的とする。平成25年度は以下の通り研究を進め、以下の予備的な結果を得た。 1)遺伝子発現レポーターTgマウスの系統の選択を行い、新奇環境暴露刺激によって蛍光レポーターが再現良く発現誘導される系統を決定した。 2)新規環境暴露後の海馬スライスを作成し遺伝子発現レポーターの発現誘導タイムコースを調べた結果、刺激後2時間でレポーターである分解促進型蛍光タンパクの検出が可能であることが明らかになった。また、神経活動とは関連しないマーカーとして赤色蛍光タンパクをアデノ随伴ウイルスによって発現させ、神経細胞の形態を可視化することが可能な系を構築した。 3) 海馬歯状回の顆粒細胞にいて遺伝子発現活性化神経細胞を単一細胞として単離して数個~数十個の細胞を集めてプールし、ここから全RNAを調製した。 4)上記の微量RNAサンプルから高効率逆転写反応(SMART法)を行い増幅cDNAを次世代シークエンスにより網羅的解析データを得た。現在このデータをもとに発現解析を行っている。
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