公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
発達障害や統合失調症の患者死後脳や精神疾患モデル動物において、興奮性シナプスにおける樹状突起棘(スパイン)の形態や容積の異常が多数報告されている。加えて、シナプス近傍の微細構造や、精神疾患との関連が深いシナプス分子(グルタミン酸やドーパミンの受容体・輸送体、足場蛋白質など)の数や分布も精神症状ないし行動異常と相関するマイクロエンドフェノタイプとしての有用性が期待される。これらの情報を必要十分な空間分解能で取得できるイメージング手法は免疫電子顕微鏡法に限られる。代表者らは、統合失調症や双極性障害患者脳で蓄積する複数のセプチン(シナプス膜およびグリア膜直下の足場蛋白質)の欠損がマウスの線条体/側坐核シナプスの微細形態と分子動態に及ぼす影響を探索し、軸索終末のドーパミン輸送体DATの減少が行動(薬理)学的異常をもたらすことを以前報告した(Neuron 2007)。そのfollowup studyの1つである本研究では、セプチン過剰発現マウスの系統的行動解析により、ピーク時の自発運動量が減弱し、社会的行動も軽度の異常を呈するという予想外の表現型を示した。パーキンソン病、統合失調症、双極性障害の患者死後脳で共通にセプチンの量的異常が見られることが国内外の複数のグループが報告してきたが、これが精神・神経疾患における行動異常の一因である可能性を示した(Molecular Brain 2013)。さらに、行動学的異常を呈する他のセプチン欠損マウスの海馬や線条体の微細形態と分子局在に関する定量的指標を3次元免疫電顕再構築(immuno-ssTEM)法で抽出するとともに、シナプス間隙~シナプス膜近傍の重要分子の定量評価には連携研究者の専門とする凍結割断レプリカ標識(SDS-FRL)免疫電顕法を適用して解析を行い、興味深い結果を得た(投稿準備中)。
2: おおむね順調に進展している
行動、生化学、電気生理、など他のデータはほぼ予定通り取得しつつある。
引き続き凍結割断レプリカ標識(SDS-FRL)免疫電顕法のデータを取得し、電気生理、行動、生化学など他のデータと併せて論文を投稿する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
Molecular Brain
巻: 6 ページ: 35
10.1016/j.cub.2014.06.024.
Nature Communications
巻: 4 ページ: 2532
10.1038/ncomms3532