研究概要 |
ストレスが抑制性GABA作動性神経の機能を障害し、脱抑制により興奮性神経系の活動が亢進することが精神疾患発症の要因の一つと考えられているが、その分子機構は明らかではない。我々は (a) GABA神経発達に関わる転写因子Npas4がストレスで増加するグルココルチコイド(GC)により転写抑制を受けること、(b)NPAS4がCdk5の誘導を介して培養神経細胞の神経突起伸長を促進すること、(c) Npas4遺伝子欠損(Npas4-KO)マウスがストレス誘発性行動異常に類似した認知・学習記憶障害(プレパルス抑制の障害、海馬依存性恐怖記憶障害)を呈することを見出している。そこで、ストレス(脳外環境要因)によるNpas4発現低下がGABA神経障害(マイクロエンドフェノタイプ)を誘発し、認知障害などの精神症状(エンドフェノタイプ)を発症させるとの仮説を立てた。本研究では、NPAS4の発現低下がGABA神経の機能障害を誘発するかどうか検討する。平成25年度においては、Npas4-KOマウスの成獣は、状況依存的すくみ行動(海馬依存的恐怖記憶)、プレパルス抑制(感覚情報処理)およびロタロッド試験における運動学習に異常があることを明らかにし、これら行動障害に関連する脳部位におけるGABA受容体遺伝子発現の変化を解析した。 その結果、側坐核や線条体ではGABA(a)受容体α1, 3, 5サブユニットの発現低下とα2サブユニットの発現増加、小脳ではα1, 4, 5、β2, 3およびγ1, 2, 3各サブユニットの発現低下が認められた。一方、出生直後から成獣に至るまでのGABA(a)受容体サブユニットの発現変動には野生型マウスとNpas4-KOマウスとの間で顕著な差は認められなかった。
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