研究概要 |
外傷後ストレス障害(PTSD)の動物モデルであるsingle prolonged stress (SPS)負荷ラットを用いて、PTSDの病態機序解明のため以下の研究を行った。 1) グルココルチコイド受容体(GR)情報系の研究:SPS負荷ラット海馬を対象に抗GR抗体を用いたWestern blot法によって、SPS負荷後1時間から8時間の間でGRの核内移行が有意に増大しており、負荷後24時間の時点では負荷前に戻る事を発見した。GRの核内移行のピークは、SPS負荷後2時間であった。SPS負荷後の海馬組織と抗GR抗体による、免疫沈降法を行った。 2) SPS負荷後のHDAC阻害薬投与による予防法の開発:SPS負荷直後・1, 2, 24, 48時間後にVorinostatを投与して、SPS負荷後7-8日目に恐怖条件付け試験(FC)を行ったが、対照群(未処置ラットのFC後)と比べてfreezing時間に有意な延長がみられていた。 3) SPSによる海馬のスパインの形態変化の解析:SPS負荷後7日目のラット海馬を用いて、FD Rapid GolgiStain Kitによるゴルジ染色法で解析を行った。SPS負荷によって海馬CA1, CA3領域の錐体細胞の樹状突起スパインの数に、統計的には有意ではなかったが減少がみられた。 本年度の研究結果から、PTSDの病態機序にストレスによる海馬GR情報系の亢進を介した遺伝子発現の変化の関与が推測された。
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