外傷後ストレス障害(PTSD)の動物モデルであるSingle prolonged stress (SPS)負荷ラットを用いて、昨年度に引き続きPTSDの病態機序解明のため以下の研究を行った。 1) グルココルチコイド受容体(GR)情報系の研究:SPS負荷ラット海馬でのBax mRNA及びimmunoreactivityが亢進し、抗GR抗体を用いたChIP AssayからBax遺伝子プロモーター領域でのGR結合が増大していた。 2) SPSによる海馬錐体細胞の樹状突起スパインの形態変化の解析:Golgi染色法による解析の結果、CA1分子層でのスパインdiameterの増大とCA3分子層でのスパイン密度の低下が検出された。放線層のスパイン形態は、特にCA1及びCA3領域で変化は見られなかった。 昨年度及び今年度の研究結果からPTSDの病態に、1) ストレスによるコルチコステロン過剰分泌による海馬GR活性化を介したBax発現の亢進、2) 分子層のスパインの変化、が密接に関与することがわかった。Baxを介したアポトーシスによって、海馬錐体細胞樹状突起スパインの障害の導かれる可能性が考えられた。
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