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2013 年度 実績報告書

PACAP高発現マウスを用いたPTSD発症リスク個人差の神経基盤解析

公募研究

研究領域マイクロエンドフェノタイプによる精神病態学の創出
研究課題/領域番号 25116527
研究種目

新学術領域研究(研究領域提案型)

研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

小出 剛  国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 准教授 (20221955)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードPTSD / PACAP / マウスモデル / ストレス応答 / 個人差
研究概要

平成25年度は、情動反応性の個体差に関わる遺伝的基盤の解明を目指して研究を進めてきた。日本で捕獲された野生由来マウス系統であるMSMは高い情動反応を示すのに対し、実験用マウス系統であるC57BL/6J(B6)は通常そのような高い情動反応は示さない。
その違いに関わる遺伝子を同定するために、MSM系統由来の各染色体をB6系統の対応する染色体と置き換えたコンソミック系統を用いて解析を進めた。その結果、第17番染色体上に高い情動性に関する遺伝子が存在することがわかった。更に遺伝子同定を目的として、MSM由来の染色体領域を絞り込んだコンジェニック系統を多数作製し、それらに関して情動反応を調べることで、17番染色体遠位部位の狭い染色体領域を持つコンジェニック系統が高い情動反応を示すことを見出した。さらに解析を進めた結果、ストレス応答に関与する神経ペプチドPACAPをコードするAdcyap1遺伝子がその原因であると考えられた。この遺伝子が原因であることを示すために、発現解析などの分子遺伝学的解析を進め、さらにストレス応答ホルモンの定量などを進めることで、PACAPの高発現と高い情動性が関連していることを示してきた。
また、Adcyap1遺伝子の高発現が個体に及ぼす影響を明らかにするために、MSM系統に由来するAdcyap1遺伝子をB6個体に導入したトランスジェニックマウスの作製を進めてきた。これまでに独立のトランスジェニックラインを複数系統作製することに成功しており、現在遺伝子の発現や行動表現型の解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度は、MSM系統で見られる高い情動性の原因の一つがストレス応答神経ペプチドPACAPをコードするAdcyap1であることを新たに発見した研究成果を論文にするために多くの時間を費やした。研究は順調に進んでおり、その証明に必要なAdcyap1遺伝子のトランスジェニックマウスの作成も行った。
現在、このマウスを用いた解析を行っているところであり、実験結果が得られ次第論文を投稿することが可能になる。さらに、ストレス応答に関して、そのストレス負荷を受けたマウスを作成するための実験を進めてきた。この実験系が確立できれば、ストレス応答により発現変化する遺伝子を網羅的に次世代シークエンサーによる解析が可能になり、大きな進展がみられるものと期待している。
現在のところ、ストレスの負荷が安定せず、ストレス応答ホルモンの定量性に安定した結果が得られないため、その実験系の再検討を進めている。そのため、計画以上に進んでいるとは言いがたい。

今後の研究の推進方策

これまでの研究の結果、MSM系統の示す高い情動反応の一因はAdcyap1遺伝子の高発現にあることを示してきた。この高発現を示すコンジェニック系統に加えて、MSMタイプのAdcyap1遺伝子を高発現するトランスジェニックマウスの作製にも成功した。これらの系統は、Adcyap1遺伝子の高発現に起因する高い情動性を示すマウスであり、ストレス脆弱性を示す人の良いモデルになると期待できる。
そこで、Adcyap1遺伝子の高発現マウスへのストレス負荷により、どのような生理学的また分子遺伝学的変化が生じているか明らかにする予定である。特に、ストレス負荷により発現する遺伝子群にどのような違いがあるか今後解明していく。また、こうした変化に伴い、神経系においてどのようなマイクロエンドフェノタイプの変化がみられるか明らかにしていく。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Segregation of a QTL cluster for home-cage activity using a new mapping method based on regression analysis of congenic mouse strains2014

    • 著者名/発表者名
      Kato S, Ishii A, Nishi A, Kuriki S, Koide T
    • 雑誌名

      Heredity

      巻: 113 ページ: 416-423

    • DOI

      10.1038/hdy.2014.42

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] A male-specific QTL for social interaction behavior in mice mapped with automated pattern detection by a hidden Markov model incorporated into newly developed freeware2014

    • 著者名/発表者名
      Arakawa T, Tanave A, Ikeuchi S, Takahashi A, Kakihara S, Kimura S, Sugimoto H, Asada N, Shiroishi T, Tomihara K, Tsuchiya T, Koide T
    • 雑誌名

      Journal of Neuroscience Methods

      巻: 234 ページ: 127-134

    • DOI

      10.1016/j.jneumeth.2014.04.012

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Control of intermale aggression by the medial prefrontal cortex activation in the mouse2014

    • 著者名/発表者名
      Takahashi A, Nagayasu K, Nishitani N, Kaneko S, Koide T
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: e94657 ページ: e94657

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0094657

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Enhanced prepulse inhibition and low sensitivity to a dopamine agonist in Hesr1-knockout mice2014

    • 著者名/発表者名
      Kanno K., Kokubo H., Takahashi A., Koide T., Ishiura S
    • 雑誌名

      Journal of Neuroscience Research

      巻: 92 ページ: 287-297

    • DOI

      10.1002/jnr.23291

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Selection for reluctance to avoid humans during the domestication of mice2013

    • 著者名/発表者名
      Goto T, Tanave A, Moriwaki K, Shiroishi T, Koide T
    • 雑誌名

      Genes, Brain, and Behavior

      巻: 12 ページ: 760-770

    • DOI

      10.1111/gbb.12088

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Identification of both copy number variation-type and constant-type core elements in a large segmental duplication region of the mouse genome2013

    • 著者名/発表者名
      Umemori J, Mori A, Ichiyanagi K, Uno T, Koide T
    • 雑誌名

      BMC Genomics

      巻: 14 ページ: 455

    • DOI

      10.1186/1471-2164-14-455

    • 査読あり
  • [学会発表] Genetic analysis of anxiety-like behavior using wild-derived mouse resources: Consomic strains and heterogeneous stock2014

    • 著者名/発表者名
      Tsuyoshi Koide
    • 学会等名
      Gordon Research Conference "Genes & Behavior"
    • 発表場所
      Galveston, TX, USA
    • 年月日
      20140209-20140214
    • 招待講演
  • [学会発表] Genetic mapping and molecular analysis of behavioral response to stress in wild-derived mouse strain2013

    • 著者名/発表者名
      Tanave A, Takahashi A, Toshihiko S, Koide T
    • 学会等名
      Neuro 2013
    • 発表場所
      Kyoto
    • 年月日
      20130620-20130623
  • [学会発表] Interacting molecules of the cell adhesion molecule Caspr3 expressed in the basal ganglia2013

    • 著者名/発表者名
      Hirata. H., Juzoh, U., Koide, T., Watanabe, K., Shimoda, Y
    • 学会等名
      Neuro 2013
    • 発表場所
      Kyoto
    • 年月日
      20130620-20130623
  • [学会発表] Genetic analysis on tame behavior using wild-derived mice2013

    • 著者名/発表者名
      Goto, T., Koide, T.
    • 学会等名
      Neuro 2013
    • 発表場所
      Kyoto
    • 年月日
      20130620-20130623
  • [学会発表] Genetic dissection of clustered QTLs related to strain difference of home-cage activity2013

    • 著者名/発表者名
      Koide, T., Ishii, A., Nishi, A., Umemori, J., Kuriki, S., Kato, S.
    • 学会等名
      Neuro 2013
    • 発表場所
      Kyoto
    • 年月日
      20130620-20130623
  • [学会発表] Escalated aggression by the activation of 5-HT system via glutamate in the dorsal raphe nucleus2013

    • 著者名/発表者名
      5. Takahashi, A., Koide, T.
    • 学会等名
      Neuro 2013
    • 発表場所
      Kyoto
    • 年月日
      20130620-20130623
  • [学会発表] 野生由来ヘテロジニアスストックを用いたマウス従順性の新たな遺伝解析法の確立2013

    • 著者名/発表者名
      後藤達彦、小出剛
    • 学会等名
      第60回日本実験動物学会総会
    • 発表場所
      筑波
    • 年月日
      20130515-20130517
  • [学会発表] 野生由来ヘテロジニアスストックマウス作製過程におけるアレル頻度のシミュレーション2013

    • 著者名/発表者名
      小出剛、高野敏行、後藤達彦
    • 学会等名
      第60回日本実験動物学会総会
    • 発表場所
      筑波
    • 年月日
      20130515-20130517
  • [学会発表] 群飼育マウスにおける上下関係が行動に与える影響

    • 著者名/発表者名
      長澤達弘、高橋阿貴、田邉彰、小出剛、榊原啓之、保田倫子、下位香代子
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸
  • [図書] マウス実験の基礎知識 第2版2013

    • 著者名/発表者名
      小出剛 編
    • 総ページ数
      222
    • 出版者
      オーム社

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公開日: 2015-05-28  

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