研究領域 | マイクロエンドフェノタイプによる精神病態学の創出 |
研究課題/領域番号 |
25116530
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂口 昌徳 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (60407088)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 記憶 / PTSD / 海馬 / 汎化 |
研究概要 |
本研究は、PTSD病態に記憶情報の処理メカニズムに異常が起きていること、特に記憶転送メカニズムとの関連を明らかにすることに有る。申請者は、申請時点で理化学研究所に在籍していたが、H25年度より筑波大学へ異動となり、研究室を主催し本研究を遂行することとなった。異動先では研究室のセットアップや,すでに前職で利用中であったc-fos-tTAマウスを含むトランスジェニック動物や大臣確認実験を必要とするVSVウイルスベクターの利用施設を再構築する必要に迫られたため、多少の計画の遅れが生じたことは否めない。しかし、本年度内に動物行動学実験設備・光遺伝学設備・ウイルス産生設備の設置および運用の開始、TRE-tTA*-ArchT等のウイルスベクターの構築等を終了させることができた。なお、本研究計画の予備実験を遂行中に、PTSDの汎化のメカニズム特に汎化が起こる条件について、興味深い一面を見い出すに至った。本研究の最大の目的は動物モデルを用いて、ヒトの精神疾患に認められる病態を明らかにすることにあるため、この知見について今後検討を深め、領域に貢献することを目指す。現在、エジンバラ大学や筑波大学の精神保健衛生グループとも協力し、基礎と臨床の専門家の意見を取り入れながら研究を進めている。本研究は、PTSDの病態解明を行なう上で意義の深いものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は、2013年4月より筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構へ異動となり、独立准教授として研究室を主催し本研究を遂行する立場となった。現実には研究室を部屋の設計・改修工事から進める必要があったため、研究計画に多少の遅延が生じたことは否めない。しかしながらその間にも、遺伝子組換え動物の購入および繁殖、行動学・光遺伝学実験設備の設置、必要となるウイルスベクターの構築、ウイルス実験設備の大臣確認申請等、当研究に必要な準備を進めた。また完全な実験設備の整備を待たず、PTSDをモデルとした恐怖記憶条件付け課題の予備実験を繰り返す中で、PTSDの汎化のメカニズムに迫るデータを得ることができた。この結果の詳細は未発表データのため詳細については記載しないが、汎化が起こるには時間軸とコンテクストの暴露状況に一定のルールがあることが示唆されるデータを得た。これについては現在、学会発表等に向けて精力的にデータの収集を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者の異動に伴い、当初計画していた、PTSD病態のおける、長期記憶の固定化過程の異常の関与、というテーマについてH26年度以内に予定していた実験を終了させることは若干の困難を伴うことが予想される。しかしながら、様々な実験設備のセットアップ、材料確保を終了し、研究人員獲得に関しては申請時点に比較し大幅な裁量権を得た(技術員・研究員計2名の雇用が可能)。また、申請した研究計画の予備実験段階でPTSDの主症状である汎化の病態メカニズムを示唆するデータを得ているため、本年度中はそちらのデータを取得することも重要視し、研究成果の早期発表を目指すこととしたい。PTSDの汎化は、患者のQuality of Lifeに直結する中心症状であり、PTSDの代表的な治療法の二つであるProlonged exposure therapyあるいはCognitive Processing Therapyで治療の焦点となる。したがって、マウスモデルを用い汎化のマイクロ精神病態を検討することは、臨床的に重要な意義を持つ。従って本年度は、現在取得しているデータを発展させ、汎化の病態メカニズムに迫りたいと考えている。
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