公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
マウス骨髄中のLPA4の発現を確認した。FACSによって分取した骨髄間質細胞(CD45-Ter119-CD31-)および間葉系幹細胞(CD45-Ter119-CD31-PDGFRα+Sca-1+)、成熟血球細胞(Lineage+)、造血幹細胞(CD34-Lin-Sca-1+c-kit+)、造血前駆細胞(CD34+Lin-Sca-1+c-kit+)のLPA4のmRNAの発現量を測定したところ、血球系細胞にはLPA4はほとんど発現しておらず、骨髄間質細胞にLPA4が発現していることが明らかとなった。非常に興味深いことに間葉系幹細胞では更に高いレベルで発現していた。骨髄中の造血幹細胞および前駆細胞、成熟血球細胞の解析を生理的条件下のマウスで行ったところ、LPA4欠損マウスの骨髄中の造血幹細胞数は変化していないにもかかわらず、造血前駆細胞は減少していた。しかし、骨髄造血幹細胞・前駆細胞の細胞周期には明らかな差異は認められなかった。骨髄細胞のコロニー形成能をin vitroで評価するCFCアッセイでは、LPA4欠損マウスの骨髄細胞由来のコロニーは野生型マウスと比較して減少しており、このデータはLPA4欠損マウスの造血前駆細胞が減少していることと相関すると考えられる。LPA4欠損マウスの造血幹細胞ニッチの長期骨髄再構築能を確認するために、C57BL/6N背景マウスのコンジェニックマウスであるLy5.1マウスの骨髄細胞をLPA4欠損マウスに移植し、骨髄キメラマウスを作製した。野生型マウスとLPA4欠損マウスとの間に長期骨髄再構築能に明らかな差異は認められなかった。次に骨髄抑制ストレス下でのLPA4欠損マウスの造血幹細胞ニッチの機能を評価した。マウスに5-FUの投与またはX線照射を行い一時的な骨髄抑制状態を誘導したところ、野生型マウスと比較してLPA4欠損マウスは致死率が有意に高かった。また、骨髄抑制後のLPA4欠損マウスの末梢血中の白血球数は野生型と比較し早期に減少し、骨髄中の造血幹細胞および前駆細胞の数の回復が遅延していた。
2: おおむね順調に進展している
実験系の確立は順調であり、研究課題の達成に支障を来す問題は生じていない。今年度以降は、実験を繰り返し、論文発表に向けてデータを蓄積する予定である。
骨髄抑制後の回復期において骨髄間質細胞が産生するCXCL12やSCF等のサイトカインは造血回復のための重要な因子であるが、これらのサイトカインの発現を調節するメカニズムは不明である。また、LPA4欠損マウスの表現系から、骨髄抑制後の回復期にLPA4の機能は重要であると考える。しかもLPA4が間葉系幹細胞に高発現しているという本研究で明らかになった知見より、同じ間葉系細胞であるCAR細胞にもLPA4が発現していることが想定される。以上のことから、H26年度はLPA4がCAR細胞においてCXCL12やSCFの発現を調節する重要な分子の1つではないかとの作業仮説を立てて研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
FASEB J.
巻: 28 ページ: 440-452
doi: 10.1096/fj.13-233262
巻: 28 ページ: 871-879
doi: 10.1096/fj.13-233106
http://www.med.akita-u.ac.jp/~bougyo/Home.html