公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
コリンはヒトの必須栄養素であり、神経伝達物質アセチルコリンや生体膜成分ホスファチジルコリンの材料となる。Enpp6は細胞外に触媒部位を持つ酵素でありリゾホスファチジルコリン(LPC)やグリセロホスホコリンなどのコリン含有ホスホジエステルを加水分解しホスホコリンを産生する活性をもつことから、コリン代謝に関わることが示唆されていた。しかし、Enpp6の基質特異性の分子基盤は不明だった。そこで、Enpp6のコリン認識機構を解明するために、Enpp6の結晶構造解析を行い、Enpp6とホスホコリンの共結晶構造を1.8Åの分解能で決定することに成功した。共結晶中でコリン残基は、Enpp6の4つのチロシン残基(Y72、Y75、Y157、Y188)を含むコリン結合ポケットにより認識されていた。これらのポケットを構成するアミノ酸残基は哺乳類から魚類までのEnpp6で完全に保存されていたことから、Enpp6が種を超えてホスホコリンを認識することが示唆された。ATX(Enpp2)は血中のLPCを分解し、リゾホスファチジン酸を産生する細胞外酵素である。ATXの発現亢進は乳がん、肺がん、脳腫瘍や動脈硬化、神経因性疼痛などのさまざまな疾患と関連することから、ATX阻害剤は治療薬として期待されている。東京大学創薬オープンイノベーションセンターの長野教授、東北大学の青木教授との共同研究により、複数のATX阻害剤を創出し、ATXと3種類の阻害剤との複合体構造を決定することに成功した。この結果、阻害剤は亜鉛イオンと結合し、かつ、LPCのアシル基認識に必須の疎水性ポケットを占拠することによりLPCの結合を阻害し、ATX阻害剤として働くことが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
Enpp6とホスホコリンとの共結晶構造を高分解能で決定することに成功し、本研究課題の最重要目標のひとつだった「Enpp6の基質認識機構の解明」に成功したため。
決定した結晶構造に基づきin vitro、in vivoの変異体解析を推進し、Enpp6によるコリン認識の生理的な重要性を実証する。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
ACS Chem Biol
巻: 8 ページ: 1713-1721
10.1021/cb400150c
Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun
巻: in press ページ: in press