公募研究
食物の消化・吸収部位である腸管には多くの免疫担当細胞が配置され、外界から侵入してくる病原微生物に対する生体防御と食餌性抗原や腸内細菌に対する免疫学的寛容という相反する免疫応答を巧みに制御することで、生体の恒常性を維持している。一方で腸管免疫を介した恒常性維持の破綻は各種免疫疾患の発症につながる。これまでの研究から、腸管免疫の制御における脂質の関与が示されているが、そのメカニズムについては不明な点も多く、現在その解明に向けた精力的な研究が進められている。本課題においては、代表者がこれまで進めてきたスフィンゴシン1リン酸(S1P)や食餌性脂肪酸を介した免疫制御に関する研究基盤をもとに、腸管組織における各種脂質の産生と認識、さらには免疫疾患との関連を腸内環境因子の関与も含め明らかにするための研究を遂行した。腸管での生体防御を担うIgA抗体に着目した研究から、市販されている食用油の内、パーム油が腸管でのIgA抗体の産生を増強する働きがあることを見いだした。さらにパーム油に多く含まれるパルミチン酸がその機能を担う責任脂肪酸であることも明らかにした。その作用機序としてパルミチン酸がIgA抗体産生細胞に直接的に作用しIgA抗体の産生を促進する経路と、組織内でパルミチン酸がセリンパルミトイル転移酵素の働きによりスフィンゴ脂質へと代謝された後、IgA抗体産生細胞の増殖を誘導する経路が存在することを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究を遂行することで、腸管での生体防御を担うIgA抗体を増強できる食用油とその責任脂肪酸を同定することが出来た。さらにその免疫学的作用機序も明らかにすることができた。これらは食品免疫学という観点から食用油の重要性を提示する学術的にも社会的にもインパクトのある結果であると考えられる。
順調に研究を遂行できていることから、引き続き予定に従い研究を継続する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (24件) (うち招待講演 24件)
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