研究概要 |
高級不飽和脂肪酸の代謝産物は炎症に関連する分子であり,生化学的研究材料として興味深い化合物である。しかし,レゾルビン類やイソプロスタン類は化学的に不安定な構造をもつため,有機合成法の開発は遅れており,市販もされていない。こうした状況を踏え,我々は以下のテーマで研究を行った。 レゾルビン類の合成研究:(1) 8位と15位に水酸基があり,その間をE,E,Z-共役トリエンで連結しているmaresin 1 の合成では,不斉エポキシ化反応を活用してシスオレフィンを含むen-yneアリルアルコールを立体選択的に構築した。一方,トランスアリルアルコール中間体はケトンの不斉還元を経由して合成した。そして,両者を鈴木カップリングして合成を完成させた (Tetrahedron Lett.)。現在,vicinal ジオールと共役オレフィン系から成る resolvin E3 の合成もほぼ終了している。共役テトラエンをもつ resolvin D1 の合成では,共役テトラエンの構築に鈴木カップリングが使えることを確認した。(2) レゾルビン類に類似した構造をもつ 12-HHT では,構造活性相関に備え,天然体とアナログを合成した (Synlett)。 エポキシイソプロスタンE2の合成研究:光学活性な3-シクロペンテン-1,4-ジオールのモノアセテートから合成したアリルアルコールをClaisen転位してω側鎖を導入した。そして,五員環内のオレフィンをブロモヒドリン化し,酸化してα-ブロモケトンに誘導した。このα-ブロモケトンとα側鎖相当のアルデヒドのアルドール反応では新しいBr-Li交換反応を開発した。最後に,脱水・酸化等の変換反応を経て,エポキシイソプロスタンE2の合成を達成した (Org. Lett.)。
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