今年度は昨年度まで明らかにした部分を受けて、さらに解析を進めた。昨年度までに、アナンダミド合成酵素であるNAPE-PLDの線虫ホモログnape-1が軸索再生の負の制御に関わることを見出していたが、今年度はnape-1とよく似た別のNAPE-PLD遺伝子であるnape-2もマイナーながら軸索再生に関与することを見出した。さらに、これらの遺伝子の生理学的な機能について検討した結果、野生型において切断された軸索が再生する際に切断部位を避けて伸長するという表現型を新たに見出し、さらにその忌避にnape-1/2が必要であることを発見した。一方、昨年度までに同定したアナンダミド受容体候補についてさらなる絞り込みを行い、最終的に2つの異なる受容体がリダンダントに機能していることを見出した。これら2つの遺伝子を同時に破壊すると、切断された軸索が再生する際に切断部位を避けて伸長する表現型を示さなくなった。さらにnape-1の異所発現は切断神経の軸索伸長の際に異所的忌避を示すことが昨年度までの解析でわかっていたが、2つの受容体を破壊するとこの忌避も示さなくなった。以上のことから、アナンダミドは神経軸索再生においてnape-1/2に依存して合成され、2つの異なる受容体を介してシグナルを活性化することにより、再生中の神経軸索が切断部位を忌避して伸長するよう制御することが示唆された。以上の結果は現在論文にまとめて投稿中である。
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