公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ショウジョウバエは、遺伝学実験のモデル動物として発生や行動などの分子遺伝学的解析に古くから利用されて来ている。しかし、その膜脂質や脂質メディエーターについての知見は未だ僅かである。本研究では、ショウジョウバエの温度選択行動へ及ぼす影響を指標に、体温調節に関わる脂質メディエーターを同定することを第一の目的とする。さらに、脂質メディエーターの産生機構と標的細胞での作用機序を解明することにより、脂質メディエーターの新たな生物機能と共に種を越えた普遍的な機能を見出すことを最終目的とする。最近、温度センサーとして機能する一連のTRP(Transient Receptor Potential)チャネルが多価不飽和脂肪酸により活性化されることが明らかとなった。ショウジョウバエではΔ9脂肪酸不飽和化酵素desat1が唯一の膜脂質に対する不飽和化酵素であることから、体内ではオレイン酸のみが産生される。一方、ショウジョウバエ由来の種々の細胞株の脂肪酸組成を詳細に解析した結果、神経系由来の培養細胞にのみリノール酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸などの多価不飽和脂肪酸が含まれることが明らかとなった。さらに、リノール酸を産生するΔ12脂肪酸不飽和化酵素を導入した遺伝子改変個体を作製・解析した結果、TRPチャネルを発現する神経系細胞に誘導した場合にのみ顕著な温度選択行動の変化が観察された。これらの知見は、高度不飽和脂肪酸が体温調節に関わる脂質メディエーターとして機能し、温度受容ニューロンにおけるTRPチャネル活性の調節を介して温度選択行動を制御していることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
温度受容ニューロンに発現する多価不飽和脂肪酸であるリノール酸が温度選択行動の制御に関わる脂質メディエーターとして機能することを示唆する知見が得られ、当初の研究目標を達成することができた。
神経系細胞への高度不飽和脂肪酸の取り込みの分子機構を明らかにする。さらに、ショウジョウバエTRPチャネル群を昆虫由来の培養細胞に発現することにより、あるいは昆虫細胞の膜脂質環境を再現した人工膜中に再構成することにより、脂質性因子のチャネル活性に及ぼす影響を詳細に解析し、高度不飽和脂肪酸の体温調節機構におけるメディエーター機能を明らかにする。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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