これまでリゾホスファチジン酸(LPA)研究の多くは、神経発生や血管形成、がん成長などを調べたものである。これに対して、神経内分泌系とLPAシグナルの連関に着目した研究は、未だ極めて少ない。われわれは、マウスLpar1が下垂体の性腺刺激ホルモン産生細胞に発現していることを見出したが、視床下部-下垂体系におけるLPAシグナルの役割の詳細は未解明のままである。本研究では、メダカを用いて、LPA受容体の神経内分泌系における役割を明らかにする。メダカゲノムプロジェクトによりメダカLPA受容体遺伝子の構造は登録されているが、実際に発現している遺伝子の配列は不明である。そこで、本年度は、メダカLPA受容体の遺伝子構造・配列と発現部位、および機能を明らかにした。9個のLPA受容体遺伝子が登録されているが、そのうちの8個がゼブラフィッシュLPA受容体遺伝子と高い相同性を示した。Lpar1、Lpar4、Lpar5の5’側の構造が登録されている遺伝子情報とは異なっており、5‘race解析により新たな遺伝子構造を同定した。これによりN末端の配列も登録情報と異なることが明らかとなった。各LPA受容体の種々の組織における発現を調べ、普遍的な発現を示したLpar6以外はそれぞれ部位特異的な発現を示した。クローニングしたLpar1からLpar6まで、いずれもLPAに対する応答性を示した。これらのことから、メダカLPA受容体、Lpar1~Lpar6はメダカ生体において機能的であることが明らかになった。 今後脳下垂体、視床下部における発現を明らかにする。
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