公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
超分子複合体や運動装置において、構成タンパク質サブユニットを同定し、複合体中のサブユニットの分子数やジオメトリー、サブユニット間の相互作用の様態を明らかにすることは重要である。モーター超分子複合体の運動メカニズムの解明のために、複合体の分子構築を明らかにすることを目的とし、ダイニン尾部とダイナクチンサイドアームを対象にそのサブユニット構造を明らかにした。ダイニン尾部は、ダイニン重鎖のN末側約3分の1のほか、中間鎖、中間軽鎖、3種の軽鎖からなる複合体である。これまでにHisタグの導入とNTA金ナノ粒子の得意結合により明らかにしてきたダイニン尾部の構造について、さらに詳細な解析を行い、3種類の軽鎖の位置を同定した。その結果、我々が最近提案した中間鎖の向き(従来の説とは逆向き)に合致するものであり、尾部の3つのドメインのうちの中央ドメインに位置することが明らかになった。また、最も頭部に近いドメインは、重鎖のアミノ酸936から1300の領域の寄与が大きいことがわかった。ダイナクチン複合体のサブユニットであるp150について、その5つのドメインの前後にHisタグを導入してNTA金ナノ粒子で標識したものと、各ドメインの欠損ミュータントの電子顕微鏡像を解析した結果、CC1ドメインは頭部から突き出した長さ30nmほどのアンテナ構造をとること、N末ドメインとHRドメインがともに頭部を形成すること、CC2ドメインはネックを形成すること、C末ドメインはp50およびP24とともにショルダーを形成すること、を見出した。このようにして、ダイナクチン複合体のうちArp1ロッドから突き出しているサイドアームの全容を明らかにし、特に、ダイニン結合部位であるCC1が頭部から大きく突き出していることは、積荷とダイニンを結ぶ役割のダイナクチンのダイニン運動制御の機構解明の大きな前進となった。
1: 当初の計画以上に進展している
ダイナクチンp150のダイニン結合部位であるCC1について、アンテナ構造をとることを新たに同定したことは、これまでのダイニン・ダイナクチン相互作用の分子メカニズムの理解を大きく変更させる重要な進展である。さらに、CC1がダイニンの運動活性を阻害するという予備的な知見も得ており、ダイナクチンがダイニンの運動機能を活性化するのか不活性化するのか、制御の原点に立ち返った検証が必要であり、これまでの常識を覆す知見を得ることができた。
ダイナクチンp150のCC1部分は、長いコイルドコイルが中央で折り返した構造をとると予測されるが、p150は二量体として存在するので、1本の逆並行のコイルドコイルが2本より合わさったものであるか、あるいは2本の並行コイルドコイルが折れ曲がったものであるのかを明らかにする。さらに折れ曲がり点とコイルのレジストリを明らかにし、ダイニンとの相互作用の基本となるダイナクチン側の構造基盤を明らかにする。これまでCC1は細胞中で過剰発現するとダイナクチン複合体に変わってダイニンに結合するためにダイニンの細胞内機能を阻害すると考えられてきたが、我々の予備的な実験では、CC1はダイニンのin vitro 運動活性を直接阻害することが見出された。このことは、CC1の結合自身がダイニン機能を不活性化することを示しており、果たして、ダイナクチン複合体はダイニンの運動を活性化するのか、不活性化するのについて、また、ダイニン尾部に結合したダイナクチンがどのようにダイニン頭部のモーター活性を制御できるのかについて、明らかにする。
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