公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
マイコプラズマの滑走運動は新規の運動様式であり、そのメカニズムの解明が重要課題である。この運動は、Gli349タンパク質が「足」のように機能し、構造変化することによって起きる。しかし、Gli349の運動機構を明らかにするためには、Gli349の詳細な立体構造とダイナミクスの解明が必要である。そこで本研究では、Gli349を短い構造ユニット(リピートやヒンジ)に断片化して、各々の立体構造とダイナミクスをNMR法やX線小角散乱法によって解明したのち、それらを連結して再構築することにより、Gli349全体の詳細構造とダイナミクスの解明を目指す。平成25年度は、次の成果を得た。以前の理論解析で推定されたGli349のリピート部位の情報を用いて、Gli349を断片化したタンパク質約6種類の発現系構築と精製を行った。その結果、これらのリピート断片は可溶性が低く、安定なドメイン構造として単離できなかった。次に、Gli349のドメイン境界を独自に推定し、約10種類のタンパク質断片の発現系構築と精製を行った。その結果、可溶性の高いタンパク質断片を1個得ることができた。しかし、NMR測定が可能なほど高濃度にすることはできなかった。そこで、X線小角散乱法を用いて、この可溶性断片の立体構造解析を行った結果、その断片内に含まれるリピート構造の概形と、リピート間の空間的配置についての情報を得ることができた。このことから、Gli349は予想通り、短い構造ユニットが繰り返し出現するリピート構造を持つことが示唆された。しかし、以前の理論解析から推定されたリピート境界の位置は、修正が必要かもしれない。この他に、NMR法などを用いて、タンパク質のダイナミクス解析に関わる研究も行った。また、タンパク質の立体構造に関する統計的解析も行った。
2: おおむね順調に進展している
当初、Gli349タンパク質断片を構造解析可能な状態で得ることに困難があったが、10種類以上のタンパク質断片を作成して試行錯誤した結果、この問題を克服できた。この可溶性断片のX線小角散乱解析により、Gli349の構造ユニットの概形、および、構造ユニット間の空間的配置を明らかにし、Gli349がリピート状構造を持つことを示した。
今後は、平成25年度に得られた可溶性断片の詳細な立体構造と運動ダイナミクスを解析していく予定である。具体的には、まず、複数のリピートを含んでいる可溶性断片を、更に各リピート単位にまで断片化する。次に、このリピート断片に、可溶性を向上させるためのタグなどを付加したあと、NMR法を用いて、三次元立体構造の決定、および、ダイナミクス測定を行う。立体構造決定後は、相同性モデリングによって、他の全リピートの構造を予測する。これらの実験と並行して、平成25年度に行ったものとは異なる断片化も試みて、より可溶性の高いGli349断片を得ることも検討する。
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http://folding.c.u-tokyo.ac.jp/