公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
黄色ブドウ球菌は軟寒天培地上で巨大コロニーを形成する。我々はこの現象をコロニースプレッディングと命名している。本研究において我々は黄色ブドウ球菌のコロニースプレッディングに影響を与える宿主因子の同定を試みた。黄色ブドウ球菌のコロニースプレッディングはウシ血清を軟寒天培地に添加することにより促進された。ウシ血清を液体培地に添加しても黄色ブドウ球菌の増殖は促進されなかった。従って、ウシ血清によるコロニースプレッディング促進は細胞増殖の促進には依らないことが示唆された。様々な黄色ブドウ球菌株のコロニースプレッディングの血清に対する応答性を検討したところ、臨床分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) 40株のうち、促進倍率が5倍未満の株が85%、6倍以上促進される株が15%見いだされた。また、市中型MRSAの2株のコロニースプレッディングは血清添加により6倍以上促進された。以上の結果は、血清に対するコロニースプレッディング応答性を規定する黄色ブドウ球菌の遺伝的要因が多様であることを示唆している。ゲル濾過カラムクロマトグラフィーによりウシ血清を分画したところ、コロニースプレッディング促進活性は高分子量側と低分子量側に分離されて見いだされた。低分子画分のコロニースプレッディング促進活性を担う因子としてアルブミンを精製した。また、高分子画分のコロニースプレッディング促進活性を担う因子として高密度リポタンパク質粒子を精製した。高密度リポタンパク質粒子から脂質を除去すると、コロニースプレッディング促進活性は失われた。さらに、高分子リポタンパク質粒子に含有される主要リン脂質であるホスファチジルコリンはコロニースプレッディング促進活性を示した。以上の結果は、黄色ブドウ球菌のコロニースプレッディングが哺乳類血清中のアルブミン及び高分子リポタンパク質粒子により促進されることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
宿主動物因子によるコロニースプレッディング調節に関して研究を行い、哺乳類血清中のコロニースプレッディングを促進する因子の同定に成功した。本研究成果は、黄色ブドウ球菌のコロニースプレッディングが宿主環境下で促進されることを示唆する。
黄色ブドウ球菌が細胞外に分泌する毒素(PSMα)のコロニースプレッディングにおける機能を明らかにする。特に、毒素のトランスポーターの同定と機能解明によって、細胞内と細胞外の毒素の機能を明らかにする予定である。
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