細胞質分裂期の分裂位置制御は、分離染色体の中央に一過的に形成される後期紡錘体およびその中央部、細胞赤道面上に円板状に形成される微小管逆平行束マシナリー「ステムボディー」により制御されるが、後期紡錘体の形態およびステムボディーの位置制御の仕組みは理解されていない。昨年度の研究で明らかになった分裂期タンパク質リン酸化酵素Aurora Bを介した微小管脱重合因子Kif2Aの活性制御による分裂期後期紡錘体(ステムボディー微小管)の長さ制御機構の分子基盤を明らかにするため、Kif2Aの機能構造解析を実施し、ステムボディー長さ制御に必須の機能を果たすドメインを探索した。Kif2Aを含むキネシン13ファミリーで高度に保存されたN末端領域ドメインを欠損する変異体や保存アミノ酸に点変異を導入した変異体は中央紡錘体への局在が著しく抑制された。一方でN末端のみのトランケートは中央紡錘体の中央部に集積することを見出した。逆にKif2AのC末端側を欠損した変異体は後期紡錘体微小管全体に過剰集積して後期紡錘体の過剰短縮を引き起こすことがわかった。これらの結果から、Kif2Aは複数のドメインに依存した形で後期紡錘体の異なるモチーフへの集積が制御される複雑なメカニズムで後期紡錘体のサイズ制御に関与していることが明らかになった。 また、微小管動態制御異常により生じる分裂障害の詳細な原因を細胞学的に解析し、微小管配向の変化が細胞内シグナル配置と細胞の力学特性の双方に異常をもたらすことで重篤な分裂異常が引き起こされることを明らかにした。研究成果は現在学術誌に投稿準備中である。
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