本研究の目的は、心筋におけるアクチン動態の制御機構の解明を通じて、サルコメアという超分子マシナリーの恒常性維持機構を解き明かすことである。我々はこれまでに、心筋におけるアクチン動態の調節機構の解析を進めてきた結果、心筋特異的なアクチン調節蛋白質Fhod3が、マウス胎仔の心臓発生過程におけるサルコメアの新規形成に必須の役割を果たすことを明らかにしてきた。本年度は、Fhod3変異によるヒトの心筋異常の可能性を考え、既知の原因遺伝子に変異が見いだされない日本人家族性拡張型心筋症患者を対象としてFHOD3遺伝子の変異を検索した結果、進化上よく保存されたアミノ酸のミスセンス変異を1名の患者に検出した。当該変異により、アクチン動態依存性に活性化される血清応答因子SRFの転写活性が減少したことから、Fhod3がアクチン動態依存的にヒトにおける拡張型心筋症の発症に関わる可能性が示唆された。
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