研究実績の概要 |
染色体分配の過程では、DNA複製装置により新規合成されたDNA鎖が一時的に接着し、次いで、細胞の両極方向に向かって運搬されてゆく。大腸菌で新生DNA鎖が一時的に接着する分子機構は不明だったが、代表者らはダイナミン相同蛋白質CrfCが、新生DNA鎖上に結合したまま残っているDNAポリメラーゼDNA結合サブユニット(クランプ因子)に結合し、「かすがい」のような働きで新生DNA鎖同士を接着させることを明らかにした。同時に、CrfCはDNAの運搬先である細胞クォーター部位にも局在していることがわかった(Ozaki et al., Cell Reports, 2013)。細胞クォーター部位には染色体分配に重要なコンデンシン機能をもつSMC蛋白質MukBも局在している。本年度は、当初の計画と昨年度の成果に基づき、まず、CrfCの機能構造解析を進めた。CrfCはN末にクランプ結合部位とGTPアーゼドメインがあるが、C末ドメインの重要性は不明であった。昨年度はC末ドメインの体系的な欠失変異解析により、染色体分配に必須な領域を特定した。本年度は、特定した領域において種間保存性の高い残基に着目して、体系的に部位特異的変異を導入して解析した。その結果、C末の特定の残基が、CrfCの細胞クォーター部位への局在と染色体の均等分配に必要であることがわかった。さらに、CrfCのGTPアーゼ活性を再現性よく定量できる条件を確立し、GTPアーゼが活性化する条件を見出した。CrfCは、ダイナミン同様、多様なサイズの多量体を形成するが、ゲル濾過法と合わせて解析すると、CrfCのGTPアーゼ活性が多量体サイズによって制御されていることが示唆された。加えて、CrfC結合因子の網羅的探索からは数種の候補因子が得られ、有望な因子について個々に機能解析を進めた。そのうち1種はCrfCの染色体分配機能に関わる可能性がある。
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