回転運動する超分子複合体の回転メカニズムや機能を明らかにするために、複合体の構成因子間の相互作用解析を行った。前年度に代表者は部位特異的in vivo光架橋実験系を用いて、構成因子であるRodZがUV依存的に光架橋されることを見出した。本年度は、この架橋されたタンパク質の同定を行った。bacterial two-hybrid法により、RodZとMreCが相互作用することが予想されたので、抗MreC抗体により架橋産物が検出されるかを調べたが、検出されなかった。つぎに、RodZ-FLAGを発現する株で同様の架橋実験を行ったところ、抗RodZ抗体で検出されたバンドと同じ位置に抗FLAG抗体で検出されるバンドを見出した。したがって、RodZと架橋されたタンパク質はRodZ自身であり、RodZの自己相互作用を初めて細胞内で検出することに成功した。現在、RodZの自己相互作用がMreBやMreCなど他の相互作用因子によって影響されるかを解析中である。予備的な実験では、RodZの相互作用はMreBの存在が必要であるが、MreCの存在は必要ではなかった。 また、RodZタンパク質の機能解析も行った。膜タンパク質RodZの膜直下の領域を短くしていった場合、本来26アミノ酸のところ、11アミノ酸あれば部分的にではあるが機能することが分かった。また、RodZとは無関係なタンパク質MalFの細胞質領域のアミノ酸配列に置き換えた。この場合、MalFの配列の23アミノ酸が必要であった。その結果、アミノ酸配列というよりも領域の長さが重要であることが分かった。 以上のことから、本研究では、バクテリアの形態形成に必須の複合体の構築機構と、その中心となるタンパク質の機能解析を行い、新たな知見を得ることができた。これらについては、論文として投稿準備中である。
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