研究概要 |
パルイトイル化はタンパク質のシステイン残基にパルミチン酸が付加する翻訳後修飾の1つである。パルミトイル化を受けるシステイン残基には決まったモチーフがないことから,パルミトイル化修飾の有無は予測が難しいことが多い。パルミトイル化を触媒する酵素はプロテインアシルトランスフェラーゼ(PAT)と呼ばれ,ヒトにはDHHC1-22及びDHHC24の23種が存在する。Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の多くは7回目の膜貫通領域直下のシステイン残基でパルミトイル化を受けることが知られているが,その反応を触媒するPATについては不明である。我々はGPCRの中でも,スフィンゴシン1-リン酸受容体S1P1に着目し,最近我々が開発した酵母を用いたアッセイ系を利用して,S1P1のPATの同定を行った。その結果,23種のヒトDHHCタンパク質のうち,DHHC2, 3, 6, 7, 10, 15, 20が活性を示すことが明らかとなった。また,これらのうち,DHHC2, 3, 7, 10, 15, 20は別のスフィンゴシン1-リン酸受容体であるS1P5に対しても活性を示した。これらのDHHCタンパク質はGPCRに共通したPATである可能性が高い。 癌遺伝子にコードされるRasのパルミトイル化はRasの細胞膜局在と活性に必要である。我々はRasパルミトイル化の阻害剤の探索を行い,9600種の化合物の中から一次スクリーニングで16個の候補化合物を見いだした。さらに,これらを用いて二次スクリーニングを行った結果,現在3個の候補を得ている。 スフィンゴシン1-リン酸の代謝に関わるアルデヒドデヒドロゲナーゼALDH3ファミリーの解析により,ALDH3B1がC末端側でパルミトイル化とプレニル化の脂質修飾を受けることを明らかにした。これらの脂質修飾はALDH3B1の細胞膜局在と長鎖アルデヒドに対する活性に重要であった。
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