研究概要 |
ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸(PIP3)は、細胞内シグナル脂質として重要な役割を果たす膜リン脂質である。PIP3脱リン酸化酵素であるPTENやSHIP1は、炎症や癌等の発症に深く関与しており、これらの分子の翻訳後調節機構の解明は、種々の病因理解に繋がることが期待される。これまでの検討において私は、PTENやSHIP1が炎症性刺激によって新たに翻訳後修飾を受けること、また、イノシトールリン脂質分子種が変動するという予備知見を得ている。そこで本研究では、炎症性刺激に伴うPIP3代謝酵素の翻訳後修飾とイノシトールリン脂質分子種の変動との関連を解明する。 本年度は、まず、固相抽出法によるイノシトールリン脂質画分の濃縮と、トリプルステージ型質量分析計を用いた選択反応モニタリング法とを組み合わせた、イノシトールリン脂質解析方法を確立した。次にこの手法を用いて、炎症刺激に伴い変動するPIP3分子種の詳細について解析したところ、比較的短鎖のアシル基を有するPIP3分子種が増加することを見出した。また同刺激により、SHIP1やPTENがリン酸化やユビキチン化を受けることを見出した。今後はこれらの修飾様式の詳細を解析するとともに、酵素活性との関連を解析する予定である。
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