公募研究
近年、概日時計の分子的な振動機構において、時計タンパク質の多彩な翻訳後修飾が極めて重要な役割を果すことが明らかになり、時空間制御された修飾シグナルと転写リズムの連携が注目を浴びている。私共はこれまで、CLOCKをリン酸化するキナーゼCaMKIIに着目し、個体レベルでの実験を展開してきた。CaMKII alphaの活性をKR変異により欠失させたノックインマウスは、恒暗条件において一日の活動時間帯が延長し続け、そのあと活動と睡眠を不規則に繰り返すリズム障害を示すことを見出した。本年度は、単一細胞レベルの発光イメージング装置を用い、時計中枢である視交叉上核(SCN)における時計振動を計測した。その結果、CaMKII alphaの活性低下によって、個々のニューロン間のリズム同調が減弱し、左右の神経核のグローバルな同期も崩れることを見出した。以上の成果をまとめた論文はGenes Dev.誌に掲載された。さらに本年度は時計シスエレメントD-boxに着目した研究を推進した。D-boxは夕方に転写因子DBPにより活性化され、明け方にE4BP4により抑制される。これまでの研究で、E4bp4の欠損細胞において培地の酸性化に伴う時計位相のシフトが顕著に減弱することを示した。本年度は、人工的なリガンド依存的にE4BP4タンパク質を誘導する実験系を構築し、細胞リズムの位相がE4BP4の一過的な誘導に伴ってシフトすることを明らかにした。さらに、E4BP4の誘導を伴う生理的なリガンド刺激を探索し、炎症性サイトカインTNF-alphaが概日時計の位相調節において重要な役割を担う可能性を見出した。これと並行し、DBPに対する抗体を自作して定量的なChIP条件を確立した。マウス肝臓より様々な時刻にDBPが結合しているゲノム領域を濃縮してChIP-Seq解析を行い、現在、得られた大規模データをバイオインフォマティックスの手法を活用して解析中である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Commun. Integr. Biol.
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CLINICAL CALCIUM
巻: 25 ページ: 33-40
Genes Dev.
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Mol. Cell. Biol.
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http://www.biochem.s.u-tokyo.ac.jp/fukada-lab/index-j.html