公募研究
Lrp4は骨形成や神経筋シナプス(NMJ)形成などに重要な受容体分子であり、その異常は硬結性骨化症やCenani-Lenz合指症の原因となる。他方、代表者らは重症筋無力症の新規の病原性自己抗体として抗Lrp4抗体を発見すると共に、当該分子の細胞表面への局在制御に関わる糖鎖修飾と会合分子、並びに細胞内領域の複数のリン酸化修飾部位の解明に成功した。そこで、本研究では、1)Lrp4 分子の翻訳後修飾と会合分子の全貌の解明、2)Lrp4分子の翻訳後修飾に制御される個々のシグナル経路の解明、3)構造生物学的解析や数理科学的解析による Lrp4分子の翻訳後修飾シグナルの統合的な理解、4)骨化症、合指症や筋無力症等の疾患における Lrp4 分子の修飾異常シグナルの解明、を目指す。以上の経緯を踏まえ、本年度の研究においては、Lrp4結合分子として独自に発見したMesdc2の機能解析を進め、それがLrp4の糖鎖修飾と筋管細胞の細胞膜表面での発現に不可欠の因子であることを解明した。Lrp4が運動神経由来因子であるAgrinとの結合を介して、NMJの後シナプス分化の誘導と維持に必須の役割を担っていることを考えると、Mesdc2はAgrin刺激による筋管細胞上での後シナプス分化に必須であることが予想される。実際、Mesdc2のノックダウンはAgrin刺激による後シナプス分化を有意に阻害した。現在、Lrp4の糖鎖修飾部位と、各修飾のシグナル伝達時における意義、並びに、Lrp4関連疾患におけるMesdc2の異常に関する研究を進めている。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」にも記載の通り、本年度はLrp4の糖鎖修飾と結合分子に関する研究を中心として進めた。その結果、Lrp4会合分子として独自に同定したMesdc2が、Lrp4の糖鎖修飾や機能の場である細胞表面での発現、並びに、NMJの後シナプス分化に重要であることを発見した。これは、Lrp4関連疾患におけるMesdc2の異常に関する研究にも繋がる重要な知見と言える。以上の成果を踏まえ、上記の通り②と評価する。
上記の通り、本年度の研究は順調に進展している。そこで、当初の計画に沿って、Lrp4の翻訳後修飾、特に糖鎖修飾部位の同定とその意義の解明に注力する。また、Mesdc2については、先天性筋無力症等の遺伝性のLrp4関連疾患におけるMesdc2の遺伝子変異を中心に、Lrp4を含めた糖鎖修飾異常シグナルとの関連について研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 備考 (1件)
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/genetics/html/home.html