公募研究
脱ユビキチン(Ub)化酵素CYLDは家族性円柱腫症の原因遺伝子産物として同定された癌抑制タンパク質である。CYLDのC末端側に存在するUb-specific protease(USP)ドメインは、NF-κB活性化シグナルとして働くLys63結合型およびMet1結合型ポリUb鎖特異的な切断活性をもち、それ以外のUb鎖に対しては切断活性を有していない。このため、CYLDはNF-κBシグナル伝達経路に関与するタンパク質群を特異的に脱Ub化することで、NF-κBシグナル伝達を負に制御し癌化を抑制する。従って、CYLDによる癌化抑制のメカニズムの解明にはポリUb鎖の識別機構を明らかとする必要がある。本研究ではCYLDのUSPドメインとLys63結合型およびMet1結合型Ub鎖との複合体の結晶構造解析、さらに変異体を用いた切断活性の速度論的解析を行った。研究成果として、CYLDとLys63結合型およびMet1結合型Ub2量体との反応中間体の結晶構造を決定し、CYLDのUSPドメインが8種類あるUb鎖のうち、Lys63結合型とMet結合型Ub鎖のみを特異的に切断するメカニズムを明らかとした。さらに、脱Ub化活性を減少させた変異CYLDが、細胞内でNF-κBシグナル、およびJNKシグナル伝達にあたえる影響を調べ、脱Ub活性がこれらのシグナル伝達経路に与える影響を明らかとした。この成果は「Structures of CYLD USP with Met1- or Lys63-linked diubiquitin reveal mechanisms for dual specificity」というタイトルで、「Nature Structural & Molecular Biology」に掲載された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件)
PLOS ONE
巻: 10(3) ページ: 1-15
10.1371/journal.pone.0120887
Nature Structural & Molecular Biology
巻: 22(3) ページ: 222-229
10.1038/nsmb.2970.