研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
25117713
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平山 順 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (90510363)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 概日リズム / 時計蛋白質 / 翻訳後修飾 |
研究概要 |
ヒトを含む多くの生物は、睡眠/覚醒やホルモン分泌といった生理機能の日周期を外環境周期に同調させることで恒常性を維持しているが、この生理機能の日周的な変動は概日リズムと呼ばれる。マウスなどのモデル生物やヒトを対象とした解析により、概日リズムの周期性制御や外環境周期への同調機構の異常が、躁鬱病、代謝異常、発癌などの疾患の病態に関連することが報告されている。 概日リズムは、転写・翻訳に依存した約24時間の周期性を持ったフィードバックループである分子時計により制御される。特に哺乳動物の分子時計は、転写活性化因子CLOCK、BMALおよび転写抑制因子CRY (CRY1及び2)、PER (PER1, 2, 及び3)の時計蛋白質により構成される。CLOCKはBMALと二量体を形成しCry及びPer遺伝子の転写を活性化し、一方CRYとPERはCLOCK:BMAL1二量体に直接結合しその転写活性を抑制する。分子時計の転写の活性化と抑制の周期は約24時間になるように調節されており、従ってその標的遺伝子の発現および標的遺伝子の制御する生理機能には日周性が与えられる。現在までに、分子時計の日周性形成にリン酸化修飾といった翻訳後修飾を介した時計蛋白質の機能調節が重要な役割を担うことが報告されている。 本研究は、分子時計の周期調節を担う翻訳後修飾が様々な刺激に応答することに注目し、「時計蛋白質の翻訳後修飾が分子時計の外界周期への同調の分子機構として機能する」可能性を検討した。特に、ストレス応答性キナーゼMKK7の概日リズム制御における役割に関してマウス個体を用いて解析し、MKK7が個体レベルの概日リズムの外環境への同調制御を担うことを支持する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概日リズムを制御する分子時計は細胞自律的に制御されるため培養細胞に存在する。本研究は、分子時計の標的遺伝子のプロモーター下で発光酵素Luciferaseを発現するレポーターを用いてLuciferase活性の変動をリアルタイムでモニターすることにより胎児繊維芽細胞の分子時計を可視化した。次に、既知のMKK7シグナル経路の活性化刺激である酸化ストレス、紫外線、浸透圧変化などの分子時計の周期性および振幅への影響を解析し、分子時計の位相を変化させるシグナル(同調シグナル)を探索し、分子時計制御に影響を与える新規の同調刺激を同定した。 本年度の研究は、概日リズムの外環境への同調メカニズムを個体レベルで解析するための遺伝子改変マウスの準備を完成させ、解析を進めている。また、新規ゲノム編集技術および行動解析を導入し、迅速に遺伝子改変個体の作出およびその概日リズム解析を行うシステムを確立した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、同定した同調シグナルが分子時計に影響を与えるメカニズムについて、特に時計蛋白質の翻訳後修飾に注目し解析を進める。また、同定した同調シグナルによる分子時計または時計蛋白質の翻訳後修飾の調節へのMKK7シグナルの関与を検討するために、分子時計の可視化を用いた解析をMkk7-KO MEFを用いて行う。 上記の生化学的解析に加えて、マウスをモデル生物として用いた概日リズムの外環境への同調メカニズムの解析を継続する。また、細胞レベルの解析により同定した同調シグナルが個体レベルの概日リズムに与える影響およびその分子メカニズムに関してゼブラフィッシュをモデル生物として解析を進める。
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