公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ミトコンドリアはATP産生時に活性酸素を放出しており、ミトコンドリア自身が酸化傷害を受け、機能不全に陥りやすい。最近の研究から、オートファジーが選択的に機能不全に陥ったミトコンドリアを分解することで、ミトコンドリアの品質管理を行なっていることが明らかになってきた。この現象は、ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)と呼ばれ注目されており、パーキンソン病などの疾患との関連も明らかになりつつある。その重要性にも関わらず、マイトファジーを制御するシグナル経路はほとんど解明されていない。本研究課題では、出芽酵母やヒト培養細胞を用いて、マイトファジー誘導制御に関連するシグナル経路を解明し、その破綻が生体に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。平成25年度は、主に出芽酵母を用いた研究を行い、これまでに部分的に明らかにしていたMAPキナーゼHog1とその上流のシグナル経路に加え、Casein Kinase 2 (CK2)が、マイトファジーに重要であることを見いたした。マイトファジー誘導時には、ミトコンドリア外膜タンパク質Atg32の114番目のセリン残基がリン酸化されることが重要である。CK2のサブユニット破壊株では、Atg32のリン酸化が部分的に抑制され、CK2の温度感受性株やCK2阻害剤により、CK2の活性を抑制すると、Atg32のリン酸化とともに、マイトファジーが強く抑制された。また、in vitroの実験でCK2がAtg32の114番目のセリン残基をリン酸化することが確認できた。これらの結果から、CK2はマイとファジー誘導に関連する重要なキナーゼであると結論づけた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、平成25年度中に、出芽酵母におけるマイトファジーのシグナル経路研究を行い、実際にCK2がマイトファジー誘導に重要な役割を持つキナーゼであることの解明など多くの研究成果が得られている。また、平成26年度に予定している、ヒト培養細胞を用いた実験の準備も順調に行えていることから、順中に進展していると判断した。
現在、本研究は順調に推移しており、今後も当初の研究計画通り進める。平成26年度は、ヒト培養細胞におけるマイトファジーのシグナル経路の解析を中心に行う予定である。特に、Hog1のホモログであるp38を中心としたMAPキナーゼとマイトファジー誘導とマイトファジー誘導の関係を中心に詳細に解析する。また、出芽酵母の研究では、MAPキナーゼとCK2を結びつける因子の存在を仮定し、その同定と機能解析を中心に研究を推進する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件) 備考 (1件)
EMBO Rep.
巻: 14 ページ: 788-794
10.1038/embor.2013.114
Hepatol Res.
巻: 32 ページ: 569-575
10.1111/j.1872-034X.2012.01103.x
http://www.niigata-u.ac.jp/tenure_track/researcher/kanki_tomotake.html