公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
自然免疫関連受容体であるNLRP3は、リソソーム・ファゴソームの損傷に応じて情報伝達因子ASCおよびプロテアーゼCaspase-1と共にNLRP3インフラマソームを形成し、炎症性サイトカインIL-1ベータの産生を介して炎症を惹起する。尿酸塩結晶などの刺激性粒子によるNLRP3インフラマソームの過剰な活性化は痛風などの炎症性疾患の発症要因となるため、NLRP3インフラマソーム活性化を阻害する化合物の同定は重要な研究課題である。我々は、化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを行い、痛風治療薬であるコルヒチンがNLRP3インフラマソームの活性化を抑制することを見出した。微小管は尿酸塩結晶などの刺激に応じてミトコンドリアを微小管形成中心方向へと輸送することにより、小胞体上のNLRP3とミトコンドリア上のASCの近接を誘導し、NLRP3インフラマソームの活性化を促進する。コルヒチンなどのチューブリン重合阻害剤は、微小管依存的に誘導される小胞体とミトコンドリアの近接を介したNLRP3インフラマソームの活性化を抑制する。尿酸塩結晶などの刺激性粒子は、ミトコンドリアの損傷を惹起するため、細胞内NADが減少してNAD依存性のアルファチューブリン脱アセチル化酵素であるSIRT2の活性が低下する。SIRT2の活性低下はアセチル化アルファチューブリンを増加させるため、ダイニン依存的なミトコンドリアの輸送を介したNLRP3とASCの近接が誘導される。損傷ミトコンドリア由来の活性酸素種は、NLRP3インフラマソームの直接的な活性化を誘導するが、NLRP3とASCの近接には影響を与えない。これらの解析結果は、NLRP3を活性酸素種が直接的に活性化する経路に加えて、NLRP3からASCへの情報伝達を行うための場を整える微小管依存的な経路がNLRP3インフラマソームの活性化に関わることを示している。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究目的に関連する原著論文をコレスポンディングオーサーとして発表し、また新たに投稿した原著論文がリビジョンの状態にある。また、これらの研究成果について、多くの学術集会において招待講演を行った。さらに、これまでの業績が評価され、平成26年度日本薬学会奨励賞を受賞した。
翻訳後修飾に着目した解析を行い、リソソームの損傷からNLRP3インフラマソームの活性化に至るまでの情報伝達経路を制御する因子を同定する。さらに、同定した因子が生活習慣病の発症に絡んでいるかどうかについて解析する。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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