研究概要 |
今年度は主に野生型マウスと慢性腎臓病症状を示すモデルであるCol4a5変異マウスの腎糸球体におけるp53翻訳後修飾状態を調べるため検討を行った。 手法はマウスより腎糸球体のみを単離し, タンパク質抽出を行った後, 抗p53抗体によるp53タンパク質の精製を行い, nanoLC-MS/MS解析によってp53の翻訳後修飾を確認する方法を選択した。しかしながら, 腎糸球体のタンパク質溶液からp53を免疫沈降により精製する過程で, nanoLC-MS/MS解析に充分量なp53を得ることに成功していない。これは充分量のp53を得るためのタンパク質量を糸球体から回収出来なかったことに起因すると考えられたため, 回収に用いるマウスの匹数を増やし再度検討を行っているところである。一方Col4a5変異マウスにおいて腎糸球体上皮細胞であるpodocyte特異的にp53を欠損させたところ病態が悪化することが示された。この結果は腎糸球体でも特にpodocyteにおけるp53の重要性を示唆するものであり, 今後はpodocyte-p53の翻訳後修飾とその機能との連関にも焦点を当て研究を進めて行く予定である。さらに、アポトーシスを誘導する遺伝子(BAX, p53AIP等)のp53結合配列(p53-A)と腎機能維持に重要とされるp53標的遺伝子(p21, BMP-7等)のp53結合配列(p53-B)をそれぞれpromoterに導入したGFP, DsRED vectorを作製した後(p53-A-GFP, p53-B-DsRED vec), これらvectorを安定的に発現する細胞株を樹立し薬剤のスクリーニングに用いることで選択的なp53翻訳後修飾誘導薬の同定を行う。
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