研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
25117723
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
三島 正規 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70346310)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NMR / 構造解析 / 微小管 / TTL / Tubulin Tyrosine Ligase |
研究概要 |
微小管(チューブリン)の様々な化学修飾が、種々の重要な生命現象に関与していることが近年明らかになってきている。本研究ではヒトTubulin Tyrosine Ligase 1(TTL1)とチューブリンダイマーの複合体の立体構造解析を行い、チューブリンのチロシン化のメカニズムを、その立体構造に基づいて理解し、化学修飾による微小管動態制御の構造的基礎を得ることを目的に研究を行っている。 現在までに全長ヒト TTL1の大腸菌による発現系を構築し、精製系を確立済みである。大量に封入体を形成したことから、シャペロンの共発現系を用いた。これにより最終的な収量を約5倍にすることに成功している。すでに13C,15N,2Hラベルした蛋白質を調製し、多次元NMR測定に取り組んでいる。当初、NMR測定温度でTTL1が凝集を起こし、NMRスペクトルも極めて分離の悪いものであったが、buffer条件の検討を行い、現在までに測定温度で凝集が起こらず、NMR信号の分離のよい条件を見つけることができている。主鎖のNMR信号帰属のため、高分子量測定用のアミド観測TROSY法を用いて行った。この際、連携研究者の伊藤らによって開発の行われている非線形サンプリング法の導入により、スペクトル中のほとんどの信号でそのS/N比を従来の2倍程度向上させた。次のステップである、立体構造情報を得るための選択的なメチル標識試料によるメチル観測TROSY(メチルTROSY)測定にむけて、立体選択的なメチル基のラベルをした前駆体を合成し、テスト試料の調製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
buffer条件の検討を行い、現在までに測定温度で凝集が起こらず、NMR信号の分離のよい条件を見つけることができていること、主鎖のNMR信号帰属のため、高分子量測定用のアミド観測TROSY法を用いた測定を非線形サンプリング法の導入により行うなど、NMR解析を進めている。また、立体選択的なメチル基のラベルをした前駆体を合成し、テスト試料の調製に成功するなど、TTLの立体構造情報を得るための選択的メチル観測TROSY(メチルTROSY)測定にむけて準備ができているなど、おおむね順調な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
TTLとチューブリンダイマーとの相互作用面を、saturation transfer実験により同定する。またsolvent PREによる相互作用面の同定も試みる。これらの情報を用いて、ドッキングシミュレーションをHADDOCKを用いておこない、複合体モデルを構築する。また、放射光を利用して、X線小角散乱を測定する。Gasbor等のソフトを用いてNMRとは独立にrigid bodyによるドッキングモデルの構築を試みる。溶液状態のNMR-SAXSの解析で、TTL1/チューブリン相互作用の生化学的理解に十分な構造基盤が確立できると考えられるが、TTL1の酵素としての側面をより詳細に化学のレベルで理解するためには、X線結晶構造解析も行う。
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