研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
25117726
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
後藤 聡 立教大学, 理学部, 教授 (60280575)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | GPI / 糖鎖修飾 |
研究実績の概要 |
ほとんどの分泌または細胞膜に局在するタンパク質は、糖鎖などによる翻訳後修飾を受けることによって正しく機能することができる。私達は、その翻訳後修飾がどのように制御されているのか、また、どのような生理的役割を果たしているのかについて解析を行っている。本年度は、特にglycosylphosphatydilinositol(GPI)による修飾のメカニズムについて解析をおこなった。GPIは糖脂質であり、タンパク質と共有結合することによって、結合したタンパク質(GPI結合タンパク質)を膜に係留させる。私達は、ショウジョウバエのGPI結合タンパク質であるDlpのmRNAが極性のある上皮細胞のどこに局在するかを調べ、アピカル側の小胞体ではなく核近傍の小胞体にのみ局在することを見出していた。この結果は、Dlpは核近傍の小胞体で翻訳されていることを示す。GPIは小胞体上でタンパク質に付加されるので、私達はGPIの生合成が核近傍の小胞体で行われるのではないかと考えた。そこで、GPIの生合成に関わる酵素PigBに対する抗体を作製し、その局在を調べたところ、驚くべきことに核膜上にあることがわかった。これは従来の定説とは異なる結果であるが、Dlpの翻訳がGPI生合成の場である核膜近傍であることは理解しやすい。すなわち、核膜で生合成されたGPIは、その近傍の小胞体に輸送され、そこで翻訳されたばかりのDlpに付加されていると考えられた。その可能性を確かめるために、GPIをタンパク質に付加する酵素複合体(transamidase complex)のコンポーネント(PigU, PigT, GPI8, PigS, GAA1)に対する抗体の作製を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メジャーな翻訳後修飾のひとつであるGPI付加について、新たなメカニズムの可能性が強く示唆される結果を得ることができた。その理由としては、培養細胞ではなくショウジョウバエの個体内にある組織を用い、抗体を用いendogenous proteinの局在を検出することに成功したからだと考えられる。また、その可能性を検討するための実験も立案できた。その実験の結果次第では、GPIによる翻訳後修飾の新たなメカニズムが提唱できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
GPIをタンパク質に付加する酵素複合体(transamidase complex)のコンポーネント(PigU, PigT, GPI8, PigS, GAA1)に対する抗体が完成したら、その抗体を用い、細胞内のどこに局在するかを詳細に検討する。もし、核近傍の小胞体に局在していれば、GPI付加は、小胞体全体で行われているのではなく、核近傍の小胞体でのみ行われていることがわかる。これは、細胞生物学においてとても興味深い結果ということができるだろう。
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