公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
近年、非常に多くのヒト遺伝子で、RNAポリメラーゼII (以下Pol II)が転写開始直後に一時停止していることが明らかになり、遺伝子発現において転写伸長のプロセスが重要な役割を果たしていることがわかってきた。Pol IIの一時停止が解除されPol IIがRNA合成を再開するためには転写伸長因子の働きが必要である。ところが、転写伸長因子が、どのようにして時期特異的に特定の遺伝子領域にリクルートされ、Pol IIの一時停止を解除するのかについては、ほとんどわかっていなかった。われわれはメディエーター複合体のサブユニットMed26が転写伸長因子を含む複合体Super elongation complex(SEC)を、c-MycやHsp70などの遺伝子領域にリクルートすることを明らかにした【Takahashi H, et al. Cell 2011】。最近、われわれはMed26に結合するもう一つの複合体Little elongation complex(LEC)を同定した。SECとLECは共に転写伸長因子ELL/EAFを共通のコンポ―ネントとして有し、Med26はEAFに直接結合することで、これらの複合体を遺伝子領域にリクルートする。解析を行ったところ、Med26はLECをsmall nuclear RNAやsmall nucleolar RNAなどのnon coding RNA遺伝子領域にリクルートすることがわかった。また、興味深いことに、基本転写因子TFIIDのサブユニットTAF7は、EAFと類似のアミノ酸配列領域を有しており、その領域でMed26と直接結合し、LECのnon-coding RNA遺伝子領域へのリクルートを阻害することがわかった。このように、Med26はスイッチ因子としてTAF7との結合をEAFに切り替えることで、LECをnon-coding RNA遺伝子領域にリクルートし、Pol IIによる転写伸長のオン・オフを制御する可能性が考えられる。
2: おおむね順調に進展している
ChIPシークエンス解析によって、Med26がLECを一部のsnRNA遺伝子やsnoRNA遺伝子領域にリクルートする役割を果たすことが明らかになった。また、LECはPol IIの転写伸長活性をin vitroで増強することもわかった。さらに、TFIIDのサブユニットTAF7が、Med26のN末端ドメインに直接結合し、Med26によるLECの標的遺伝子へのリクルートを阻害することも明らかとなった。
Med26がどのような遺伝子領域に存在するのかを明らかにするために、Med26のChIP-seq解析を行ったところ、Med26は約10%の遺伝子領域に広汎に存在することがわかった。ところが、それらの遺伝子において、実際にMed26がその発現制御に関わっている遺伝子は、一部であることが判明した。そこで、Med26によって実際に制御される遺伝子を同定するために、RNAシークエンス解析も行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Oncogene
巻: In press ページ: In press
In press
Journal of Neurology
巻: 261(1) ページ: 224-226
10.1007/s00415-013-7134-5
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~d20505/takahashi/index.html