公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
転写開始や伸長を含む様々な転写サイクルの過程にクロマチン構造が関わっていると考えられているが、その詳細については、未だ不明な点が多い。我々は、INO80複合体構成因子に着目して、クロマチンリモデリング複合体と転写サイクルとの関連を明らかにしようとしている。我々はまず、INO80クロマチンリモデリング複合体の構成因子であるアクチン関連タンパク質Arp5およびArp8の遺伝子破壊細胞を用いて、INO80クロマチンリモデリング複合体と転写サイクルとの関連を解析した。ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)遺伝子の発現と、HO-1遺伝子領域におけるINO80, Arp5, Arp8の結合の解析を行った。その結果、酸化ストレスに対応したHO-1の発現制御において、これらのクロマチンタンパク質の結合が大きく変化していることが示された。また、東工大・十川博士との共同研究により、これらのタンパク質の一分子イメージング観察実験系を確立した。また、Arp5, Arp8の解析、およびその創薬への応用展開を目的として、これらのタンパク質に結合するbicycle peptideのスクリーニングを行った。その結果、Arp5, Arp8に結合するbicycle peptideの単離に成功した。このペプチドを化学合成して、精製したArp5, Arp8に対する結合をin vitroで解析したところ、これらのペプチドが今後の解析に必要な結合能力を有することを示唆する結果が得られた。
1: 当初の計画以上に進展している
ヘムオキシゲナーゼ1遺伝子の解析を通じて、酸化ストレスに応答した遺伝子発現制御に伴う転写サイクル変化を、INO80クロマチンリモデリング複合体の構成因子(Ino80、Arp5, Arp8)の挙動の変化を通じて観察することができた。また、これらのタンパク質の挙動・機能をさらに解析するための、一分子イメージの観察実験系を、領域内共同研究で立ち上げることができた。さらに、Arp5, Arp8に結合するbicyclic peptideの単離・合成に成功し、今後の機能解析や、創薬への応用展開に道を開くことができた。
これまでに作成した、Arp5およびArp8に対するbicycle peptideを用いることにより、これらのタンパク質およびINO80クロマチンリモデリング複合体の機能解析を行う。また、ヘムオキシゲナーゼ1の遺伝子発現が異常になっている癌細胞にこれらのペプチドを導入して解析することなどにより、創薬への応用展開も目指す。また、これらのタンパク質の一分子イメージングをおこなうことにより、転写サイクルにおけるArp5, Arp8, Ino80のダイナミクスと機能との関連を詳細に解析する。さらに、我々は、出芽酵母の系においても、クロマチンリモデリング複合体と転写サイクルとの関連を見出していることから、出芽酵母の変異株を用いることにより、その詳細を明らかにしていく。
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Oncogene
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