研究領域 | 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 |
研究課題/領域番号 |
25118506
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
黒柳 秀人 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (30323702)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 新生RNA / 線虫 / 細胞分画 / 核質 / クロマチン / 大規模シーケンス解析 |
研究概要 |
平成25年度の計画Aとして、線虫における新生RNAの標識方法および経時変化の解析方法の確立を目指した。そのために、5-ブロモウリジン(BrU)存在下で線虫を飼育して個体レベルで新生RNAの標識することを試みたが、これまでのところ、新生RNAがBrU標識された証拠は得られておらず、同様に細胞外にBrUを添加する線虫胚および幼虫由来初代分散細胞での標識は試みるに至らなかった。一方、線虫胚から細胞核を取り出し、5-ブロモウリジン三リン酸(BrUTP)を用いたNuclear Run-On法により新生RNAをBrU標識する試みについては、さまざまな条件検討を行い、新生RNAをBrU標識した上で抗BrdU抗体を用いた免疫沈降によりある程度濃縮するプロトコルを確立するに至った。 計画Bとして、mRNAの細胞内動態の解析方法の確立を目指した。そのために、線虫個体の細胞の細胞質、核質、クロマチン画分の分画方法の確立を試みた。各画分に特異的に存在すると考えられるタンパク質やRNAをマーカーとしていくつかの緩衝液や分画方法を比較し条件検討することで、L1ステージに同調した線虫から上記3つの画分を安定的に分画し、分解させずにRNAを調製するためのプロトコルを確立した。さらに、このプロトコルに従い、野生型および比較のために転写や選択的スプライシングに異常がある2種類の変異体株の同調したL1幼虫からそれぞれ3つの細胞画分を調製し、全RNAを調製した。 本研究の平成25年度の計画に基づく上述の各分画の全RNAの大規模シーケンス解析について、新学術領域研究「ゲノム支援」の平成25年度の支援課題に応募して採択され、各画分の全RNAのシーケンス解析を依頼し、解析を待っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画Aの新生RNAの生体内や初代培養での標識方法の確立については、少なくとも短時間の標識ではBrUによる標識が確認できなかったが、代替策として計画していたNuclear Run-On実験系では10分程度の反応で新生RNAをBrU標識できることが確認できており、次の段階へ進むことが期待される。しかし、所期の目標を完全に達成するためには、生体内で継時的に新生RNAを標識できる新たな方法の検討を要する。 計画Bの細胞分画については、哺乳類培養細胞を用いた同様の分画や、線虫を用いた他の目的の研究について文献をもとに、条件等を行い、所期のプロトコルを確立することができた。さらに、計画どおり、野生型と変異体から3つの細胞分画の全RNAを調製することができた。しかし、本計画を担当していた大学院生がプロトコルを確立した段階で学位審査の準備に入り、その後その大学院生が体調を崩して実験ができない状態になった。そのため、担当者を変えてRNAの調製を行い実際の試料が調製できたのが年度末になったことから当初の予定どおり年度内にRNAシーケンス解析結果を得るには至らなかった。 計画Cとして、計画Aで確立する予定だった線虫個体で新生RNAを標識するプロトコルと計画Bで確立した細胞分画方法を組み合わせて、新生RNAの計時変化を解析する計画であったが、計画Aでの生体内での新生RNA標識法が当初の予定どおりには進んでおらず、計画Cには着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
計画AについてはBrU以外の化合物を用いて新生RNAを代謝標識する方法についても検討を要する。4-チオウラシルとT. gondii由来のウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼを組み合わせた方法を検討する予定である。 計画Cについては、Nuclear Run-On法と細胞分画法を組み合わせることで、核質分画とクロマチン分画の新生RNAについては精製して解析することが期待される。しかし、Nuclear Run-On法では長時間の追跡ができないため、計時変化の解析には向いておらず、所期の目的達成のためには、計画Aで新生RNAを生体内で代謝標識する方法の確立が待たれる。 その他については、所期の計画どおり平成26年度の計画を遂行する予定である。
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