研究領域 | 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 |
研究課題/領域番号 |
25118522
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
前川 利男 独立行政法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 研究員 (90201764)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 転写因子 / ATF-7 / ストレス / エピゲノム変化 / p38シグナル経路 / 遺伝 / 低蛋白食 / メチル化ヒストン |
研究概要 |
1、マウスの雄を離乳直後から1~2ヶ月間低蛋白質の餌で飼育して栄養ストレスを与えると、通常の餌の場合と比較して、その子供の世代の肝臓でのコレステロール生合成系の遺伝子発現が上昇することが報告された(Carone B, Cell, 2010)。そこで、ATF-7ヘテロノックアウトマウスの雄で同様の実験を行った結果、このコレステロール生合成系の遺伝子の発現上昇が見られず、雄親の餌の違いを区別して子供の肝臓での遺伝子発現に影響を与える機構にATF-7が関与していることが明らかになった。 2、この現象のメカニズムを探るために、マウスの精巣を材料にして、ATF-7の特異抗体を用いたChIPを行った。先ず、コレステロール生合成系の遺伝子17遺伝子の内、ATF-7の結合がプロモーター領域近傍に見られる遺伝子があるかどうか調べた。その結果、約3分の2の遺伝子の転写開始点から上流1.5 Kb以内でATF-7の結合が確認できた。 3、次に、マウスの精巣を材料にして、ヒストンH3K9のジメチル化とトリメチル化の量を野生型とATF-7ノックアウトマウスで比較した。その結果、いずれにおいてもATF-7ノックアウトマウスで有意に低下していることが明らかに成った。 4、1の実験をより厳密にコントロールするために、自然交配と人工授精を比較した。その結果、人工授精によって特異的に遺伝子発現が変動する遺伝子が多数見られ、コレステロール生合成系の遺伝子がピックアップされないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、コレステロール生合成系の遺伝子の約3分の2の遺伝子の転写開始点から上流1.5 Kb以内でATF-7の結合が確認できた。 2、ヒストンH3K9のジメチル化とトリメチル化の量がATF-7ノックアウトマウスで有意に低下していることが明らかに成った。
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今後の研究の推進方策 |
1、次世代シークエンサーを用いてマウスの精巣及び精子を材料にATF-7のChIPシークエンスを行い、ATF-7の結合している遺伝子と遺伝子内領域を調べる。 2、次にATF-7が結合している領域でのDNAのメチル化とヒストンのメチル化が低蛋白質でどのように変化するかを調べたい。 3、免疫組織染色法で精巣のどの細胞で低蛋白質によってヒストンのメチル化が変化するのかを確認する。 4、また、酸化ストレスマーカーを用いて、変化が見られる細胞を特定する。
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