低蛋白食で飼育したマウスの雄親の子供の肝臓でのコレステロール生合成系の遺伝子16遺伝子中10遺伝子が2倍以上の発現上昇を示し、Carone B.のCellの論文の結果はほぼ再現された。そこで、ATF-7のヘテロKOの雄親を試した結果、2倍以上に発現上昇する遺伝子は無く、最高でもHmgcr遺伝子の1.67倍で有意差は無かった。この結果、マウスでは雄親の食べた餌の情報が精子を介して子供に伝わるメカニズムが存在しており、この現象には転写因子ATF-7が深く関与していることが明らかになった。 1、マウスの精巣を材料にして、ATF-7の特異抗体を用いてChIP法でコレステロール生合成系17遺伝子のATF-7の結合領域を調べた。その結果、約3分の2の遺伝子の転写開始点から上流1.5 Kb以内でATF-7の結合が確認できた。また、コレステロール生合成系の遺伝子の発現を一括して調節するSrebf2の発現も有意に上昇している事が分かった。 マウスの自然免疫系を担うマクロファージでは、ATF-7はヒストンH3K9のジメチル化酵素G9aをリクルートしてCxcl2やStat1の転写を抑制している。マウスをLPSで刺激するとATF-7がリン酸化されてプロモーター領域から外れ、H3K9のジメチル化が減少して転写が活性化される。この活性化は少なくとも三週間以上持続して、細菌感染を抑制することを発見した。これまで、自然免疫には記憶のような現象は無いと考えられてきたが、長期に渡って細菌感染を抑制する効果から、部分的な記憶に相当するのではないかと考えている。
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