研究領域 | 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 |
研究課題/領域番号 |
25118523
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
太田 力 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (10290892)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 転写因子 |
研究概要 |
日本では毎年7万人以上が肺癌によって死亡しており、更にその死亡率、罹患率は増加傾向にある。肺がんにおける転写因子NRF2の異常活性化は、抗がん剤抵抗性やがん細胞増殖亢進を引き起こしていることを見出している。そこで、本研究は転写因子NRF2の機能発現・制御機構を分子レベルで解明し、転写因子NRF2に対する分子標的薬の作用点を絞り込むことを目的とした。この研究目的を達成するため下記の研究を行った。 1. 転写因子NRF2蛋白質複合体の単離・精製および構成因子の同定:HaloタグをN末端につけた細胞核内移行型NRF2を恒常的に発現するHeLa細胞からNRF2蛋白質複合体の単離を試みたが、精製蛋白質量が少なく構成因子の同定ができなかった。そこで、HaloタグをN末端につけたNRF2蛋白質を293T細胞に一過的に発現させた細胞からNRF2蛋白質複合体の単離を試みたところ、複数の構成因子を同定することができた。その構成因子の中には既に報告のあるCBPやp300に加え、蛋白質修飾酵素等が含まれていることがわかった。 2. 転写因子NRF2の蛋白質修飾の解析:最近、抗癌剤抵抗性肺癌細胞株の転写因子NRF2は複数の部位がリン酸化されていることを見出した。転写因子NRF2欠失ミュータントの解析から、NRF2の約50アミノ酸の領域中に3か所の主要なリン酸化部位が存在することを突き止めた。そこで、この約50アミノ酸の領域中のリン酸化可能なアミノ酸を網羅的にAla置換し、リン酸化部位の同定を試みた。その結果、3カ所のセリンが細胞内でリン酸化に関与していることを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた主要な研究は、「転写因子NRF2蛋白質複合体の単離・精製および構成因子の同定」であった。当初の予定通り、最初はHaloタグをN末端につけた細胞核内移行型NRF2を恒常的に発現するHeLa細胞からNRF2蛋白質複合体の単離を行った。しかし、大量の培養細胞を用いて解析したが、複合体として精製される蛋白質量が少なく、蛋白質複合体の構成因子の同定はできなかった。しかし、293T細胞を用いた一過的な発現システムを用いることでNRF2蛋白質複合体の単離・構成因子の同定が可能となったことにより、達成度としては、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、昨年度同定した転写因子NRF2蛋白質複合体の構成因子が、どのようにNRF2の転写活性化に関与するのか、その分子機構の解析を行い、転写因子NRF2の機能発現・制御機構を分子レベルでの解明を目指す。さらに、見出した分子機構から、転写因子NRF2に対する分子標的薬の作用点(NRF2の転写活性化能を抑制する作用点)を絞り込む。
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