IκB-ζを欠損したT細胞におけるTregの分化誘導能について、試験管内でのTGF-β刺激によるTregの分化誘導を試みた。興味深い事に、TGF-β刺激のみでは、IκB-ζ欠損T細胞のTreg分化誘導能は若干劣っているものの、IFN-γなどの中和抗体を共に加えることで、野生型マウス由来のT細胞と同定度までTreg分化誘導が認められた。本結果から、Tregの分化誘導そのものにIκB-ζは関与していない事が推察され、サイトカインIFN-γの抑制を介したヘルパーT細胞の分化バランス(Th1/Treg)が重要である事が推察された。さらに、IκB-ζを強制発現させたT細胞を用いてIFN-γ産生の影響について検討した所、IFN-γの産生は顕著に低下している事を発見した。IκB-ζによるIFN-γの産生抑制については、IκB-ζの活性中心を持たないIκB-ζ(D)と呼ばれるアイソフォームを使用するときには認められなくなる事が明らかとなってきた。 次に、申請者はIκB-ζ欠損T細胞を用いたヒストンアセチル化のクロマチン免疫沈降報をおこなった所、IFN-γプロモーターと呼ばれる遺伝子発現制御領域のヒストンアセチル化状態が顕著に低下している(クロマチン構造が閉じている)事が明らかとなった。このIFN-γプロモーターリポーターをクローニングし、IκB-ζの過剰発現を試みた所、IFN-γプロモーター活性は顕著に減少する事を突き止めた。
IκB-ζ欠損T細胞におけるTGF-β刺激そのものに異常がないかを確認するため、TGF-β刺激により30分以内に核内へと移行するSmad2/3のリン酸化レベルを比較した。すると、IκB-ζ欠損T細胞においても、野生型T細胞と同定度までSmad2/3のリン酸化が認められた事から、TGF-β刺激そのものの伝達には問題ない事が示唆された。
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