研究実績の概要 |
網膜、プロジェニター、双極細胞系譜の細胞におけるHistone H3K27、H3K4のメチル化に着目し、ChIP-qPCRにて発生にともなう修飾の変化を検討した。大きな動きが観察されたので、マウス網膜を数種類の発生段階について、視細胞とその他の細胞(双極細胞を含む)にセルソーターで分離し、それぞれについてChIP-sequenceによりH3K27me3, H3K4me3をゲノムワイドに検討した。その結果、双極細胞の運命決定に必要な遺伝子と、双極細胞の一部のサブセットの成熟に必要な遺伝子複数について、H3K27me3の脱メチル化により、遺伝子発現が双極細胞の前駆細胞で抑制状態から離脱し、発現が可能になり細胞の成熟がおこることが示唆された。このことをin vivoで確認するために、Ezh2, Jmjd3の網膜特異的ノックアウトマウスを解析した。それぞれのマウスについて、分化は免疫染色で、また遺伝子発現、ヒストンメチル化についてChIP-qPCRで解析を加えた。その結果、Ezh2-CKOでは双極細胞の一部の細胞が特異的に消失していた。Ezh2-CKOでは双極細胞の割合が増加していることが確認された。以上のことから、in vivoで実際このシステムが細胞の運命決定、成熟に重要な役割を果たしている事が示された。Ezh2-CKOについては、Ink4a, Arfの発現の顕著な上昇が観察され、他の臓器で観察されているのと同様に、これらの遺伝子発現の脱・脱抑制が網膜でもおこっていることがあきらかになった。
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