公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究の目的は、多能性細胞から心筋細胞への分化系をモデルとして、DNAメチル化やヒストン修飾等のエピゲノム標識,クロマチン状態の動的変動データに基づいてその制御機構を明らかにすることである。EC細胞あるいはES細胞からの心筋分化誘導系を用いて、FAIRE (Formaldehyde-Assisted Isolation of Regulatory Elements)解析によるクロマチンへのアクセス性(accessibility)を測定し、各分化段階に特異的なオープンになると同定されたクロマチン領域に、有意に高頻度に出現する結合配列モチーフから分化制御因子を推定した。従来心筋分化の制御因子として知られるβ-cateninやBrachyuryなどの転写因子の結合モチーフが中胚葉段階の細胞では高頻度に出現したので、それらの結合部位をChIP-seq解析により同定した。さらにSWI/SNF複合体の存在領域についてもChIP-seqにより決定した。エピゲノム標識については活性化クロマチン領域に特徴的なヒストン修飾であるK4me1およびK27Acに加えて、DNA脱メチル化に関わるヒドロキシメチルシトシンの局在をhmeDIP-seqにより検出した。さらに細胞集団内には多様性があるため、1細胞でのトランスクリプトーム解析を実施することにより、発現遺伝子間の相関関係を検出することが可能となった。領域内での連携研究の推進にも貢献すべく、新たなエピゲノム解析技術を立ち上げた。
1: 当初の計画以上に進展している
時期特異的にchromatin accessbilityが向上するエンハンサー領域候補を特定できた。心筋分化に重要であるといわれたβ-cateninやBrachyuryの結合領域をChIP-seq法によって同定したところ、両因子は近接して結合することが判明した。いわゆるスーパーエンハンサーを形成していると考えられた。ヒドロキシメチルシトシンはこれらの時期特異的エンハンサーが使われる時期にほぼ一致して局在することも認められた。1細胞のトランスクリプトーム解析データを合わせることにより、遺伝子間相互の相関関係も明らかになるなど、予定を上回る進捗が得られたと考えられる。
時期特異的に活性化されるエンハンサー領域候補を特定できたので、ヌクレオソームがフリーとなりDNAの脱メチル化が生じるために、SWI/SNF複合体やTETタンパクが同領域に動員されることをChIP-seq解析に加えてタンパクレベルでも明らかにする。また、中胚葉段階への移行に際しては、幹細胞性の喪失と連動せねばならない。一方、心筋特異的に発現する遺伝子群については幹細胞段階では発現せぬような抑制機構が働いている可能性も想定されることから、それらの遺伝子領域のエピゲノム標識の特徴について検討する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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