公募研究
本研究課題では細胞分化におけるmTORC1活性の機能を解明することを主題としている。本年度はRASの恒常的な活性化が誘導可能なLSL-KrasG12DマウスとmTORC1の完全な活性欠損が誘導可能なRaptorflマウスを組み合わせて、RAS活性時に生じるT細胞・骨髄球細胞の分化異常におけるmTORC1の機能解明を中心に研究を行った。また、Rhebflマウスの解析から、造血細胞分化への影響について解析を行った。さらに、アミノ酸によるmTORC1制御経路にて重要な因子として知られるRag経路の阻害を試み、骨髄球細胞に対する影響の評価を行った。造血細胞での恒常的なRASの活性化は、骨髄球細胞の増加を特徴とする骨髄増殖性疾患と、T細胞白血病の原因となる。Raptor欠損下では骨髄球の増多は抑制されず、予想外なことに前駆細胞・単球様細胞のさらなる増加が観察された。対照的にRaptor欠損は胸腺でのT細胞発生を早期に停止させることを見いだした。Raptorによる細胞周期停止の効果はT細胞特異的であり、Raptor欠損T前駆細胞ではT細胞の細胞周期制御に必須であることが報告されているCyclinD2, D3, CDK6蛋白の減少が認められた。mTORC1はT細胞特異的な細胞周期制御分子であり、このことが分化段階と強い相関を示す原因であると示唆された。また、Raptor欠損と同じくmTORC1欠損モデルとして知られているRheb欠損マウスではT細胞の明らかな異常は観察されなかった。Rheb非依存的な経路の阻害方法としてDominant-negative formのRagを発現誘導可能なベクターを構築したが、mTORC1活性に対する影響は観察されなかった。以上の結果から、新たなmTORC1制御機構の解明が分化段階におけるmTORC1機能の多様化を説明する上で重要となることが示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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