公募研究
B細胞の終末分化である形質細胞分化は、胚中心B細胞において抗原とB cell receptor (BCR)の遭遇を契機として、そこまでのB細胞分化を牽引してきたPAX5とその後の形質細胞分化を担うBLIMP1が入れ替わる事により開始される。本研究はこの分子的な機序を明らかにすることで、成熟B細胞から形質細胞への分化という運命決定におけるBCRシグナルの役割を明らかにする事を目的として行われた。BCRシグナルの重要な構成キナーゼであるSyk, Btk, Akt, によるPAX5のリン酸化をin vitroで検討しSykがPAX5をチロシンリン酸化する事を発見し、そのリン酸化部位を同定した。293T細胞内でSykとPAX5の共発現はPAX5チロシンリン酸化を誘導した。PAX5はNFκBによるBLIMP1発現誘導を抑制する作用があるが、レポータージーンアッセイではSyk共発現によりPAX5によるBLIMP1発現抑制が解除され、リン酸化チロシン変異PAX5を用いるとこの解除が起こらなかった。更に胚中心B細胞細胞株であるRamos細胞ではBCR刺激がPAX5チロシンリン酸化を介してBLIMP1の発現を上昇させていた。我々は以前にMAPキナーゼによるPAX5のセリンリン酸化が同様の効果を示すことを報告しているが、今回発見したチロシンリン酸化とセリンリン酸化は協調的に作用してPAX5によるBLIMP1発現抑制の解除に作用していることをレポータージーンアッセイとRamos細胞のBCRを刺激することの両方のシステムで確認した。これらのことから、BCRシグナルにおいてSykとMAPキナーゼが協調的に働き、PAX5の機能を抑制する事でBLIMP1の発現を誘導し、形質細胞分化の契機となっている事が示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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