研究概要 |
既に樹立したCre-loxPを用いた誘導発現型MLL-ENLトランスジェニックマウス(Ono R et al., Blood 122, 1271-83, 2013)由来のHSC分画(c-kit+, Sca1+, Lineage-, CD34-; long term repopulating HSC)細胞を用いてcolony replating assayと骨髄移植実験を行うと、HSC特異的な癌化が観察され、HSCにおいて高いレベルで発現している遺伝子のうち、PLZFが白血病発症において重要な役割を担っていることがわかった。しかもMLL-ENLの発現によってPLZFの発現が増強し、HSCを用いたクロマチン免疫沈降法解析ではMLL-ENLはPLZFプロモーターに結合していた。 そこで、レトロウイルスベクターpMYs-PLZF-IRES-EGFPによってトランスフォームしたHSCとコントロールとしてpMYs-IRES-EGFPを感染させたHSCに関して、各々のEGFP陽性分画を採取し、cDNAマイクロアレイ解析を行ったところ、PLZF発現HSCにおいて特異的に発現が上昇している遺伝子Xを同定した。 遺伝子Xはハエの眼の発生に関与する転写因子で、正常HSCにおいても発現しており、数種のファミリー遺伝子が存在する。固形癌における関与が示唆されているので、遺伝子Xをレトロウイルスベクターを用いてマウス骨髄細胞に導入したところ、HSCのみならず、骨髄前駆細胞も不死化した。 遺伝子XはHSCの癌化に関与する分子の中で、自己複製において重要な役割を担っている可能性もあり、今後の詳細な解析が望まれる。
|