公募研究
細胞機能特異的な遺伝子発現制御において、後成的遺伝子発現制御(エピジェネティクス)が重要な役割を果たしていることが、近年幅広い分野で明らかにされてきている。特にヒストンの翻訳後修飾(ヒストン修飾)は、細胞機能に応じて可逆的に付加・除去される一方で、細胞分裂を経ても継承されるという性質を持つため、細胞分化過程の遺伝子発現制御における基盤として働くことが示唆されている。実際にヒストン修飾変動がどのような意義を持つのか明らかにするため、我々は最近、ヒストン修飾特異的抗体由来の一本鎖可変領域(scFv; single-chain variable fragment)を用いて、生体内のヒストン修飾動態を観察する系を構築した。本課題では、ヒストンH3 Lys9アセチル化修飾特異的蛍光プローブ(H3K9ac-mintbody)を発現するゼブラフィッシュを用いて発生過程におけるH3K9ac動態の観察を行った。H3K9ac-mintbodyとH2B-mCherry(インターナルコントロール)を同時に全身で発現させた胚(15-somite stage)を、共焦点顕微鏡下で約8時間インキュベートして体節形成過程を観察した。個々の細胞におけるH3K9ac-mintbody(GFP)とH2B-mCherryの比較により、この時期の発生過程では胚全体でH3K9acレベルの上昇がみられたが、体節形成においてはある特定の細胞群が他に先行して、特に高い修飾レベルを維持することが見いだされた。この細胞群は、体節内の最も脊索側に、逆V字型に一列に並んで出現した。今後この細胞群の性質を詳しく調べるとともに、H3K9ac上昇の意義について解明を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
本課題は、細胞分化過程におけるヒストン修飾動態を、モデル動物を用いた生体内のヒストン修飾動態の変化を観察することを目的としている。現在までのところ、ゼブラフィッシュを用いたヒストン修飾の生体イメージングはおおむね順調に進展している。
引き続きゼブラフィッシュの発生過程のイメージングを進めるとともに、新規プローブの開発を始める。マウス発生過程についても観察を試みる予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Scientific Reports
巻: 3 ページ: 2436
10.1038/srep02436
巻: 3 ページ: 3510
10.1038/srep03510