公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
我々はt(1;3)転座を有する急性骨髄性白血病の転座切断点近傍よりMDS1/EVI1-like gene 1 (MEL1)を同定した。本遺伝子の機能を解析する為にMEL1欠損マウスを作製したところ、ホモ欠失マウスは胎生致死を示した。しかしヘテロマウスにおいて眼球突出、頭蓋変形等の様々な表現形を確認し、その表現形が難治性疾患である1p36欠失症候群の症状と類似していることを見いだした。1p36欠失症候群はヘテロ欠損で発症するハプロ不全の疾患である。我々はSNPアレイを用いた解析により、患者検体における共通欠失領域に、既に原因遺伝子の一つと考えられているSKIと共にMEL1が存在している事を確認した。SKI欠損マウスはホモ欠失により口蓋裂などの頭蓋顔面変形が見られるがヘテロでは見られないため、MEL1が大きな役割を持っていることが考えられる。そこで骨分化、軟骨分化に関してMEL1の発現を検討したところ、骨軟骨細胞において、未分化段階での発現が低く骨分化が進むに連れて発現が認められることが明らかになった。MEL1ヘテロ欠損マウスにおける骨分化の促進と、軟骨分化の遅延が起きており、さらにMEL1過剰発現系における骨軟骨分化の影響を検討したところ、軟骨分化の促進と、骨分化の抑制が見られた。この影響のひとつとしてSKI/MEL1の複合体はR-Smad (Smad2/3)に結合する事により、TGFβシグナルを遮断するが、我々は骨軟骨細胞株において、MEL1とR-Smad (Smad1/5)が結合している事が明らかとし、本遺伝子がBMPシグナルの伝達に不可欠であることが分かってきた。従ってこのBMP情報伝達系が骨軟骨分化への影響が重要な鍵だと考え、その検討を進めている。。
2: おおむね順調に進展している
本年度計画として、EVI1/MEL1遺伝子ヘテロ欠損マウスの神経・中胚葉発達異常についてその相違点を比較検討する。特にMEL1へテロ欠損マウスでは1p36欠失症候群と比較し、骨細胞分化、軟骨分化についてin vivo、 in vitro分化系を用いた検討を行い、運命決定因子としての性状を明らかにする。という目的で研究をスタートした。その結果、まず MEL1へテロ欠損マウスにおける骨軟骨異常の性状が明らかになり、1p36欠失症候群とかなりの類似性を見せたこと、2番目に1p36欠失症候群のゲノム解析を行い、1p36共通欠失領域を同定でき、その領域にMEL1遺伝子が含まれていたこと、3番目にMEL1へテロ欠損マウス由来の骨軟骨細胞を用いて、骨軟骨分化実験を行い、骨軟骨分化異常が見られたこと、4番目に骨軟骨細胞株を用いてMEL1遺伝子の過剰発現、shMEL1導入実験等に寄り、BMP情報伝達にMEL1遺伝子が関わる事が同定できたこと、5番目にMEL1機能は骨と軟骨で逆転している可能性、細胞質と核との局在の違いがある事、機能的に両者は異なる事が考えれること、6)RUNX2の発現がその鍵を握っている可能性がある事、等の結果を得られている。これらの結果を統合して、さらに直接的なMEL1タンパク質の機能を明らかにしたい。
これまでの結果を踏まえ、次の研究計画を立てている。先ず始めに、MEL1の骨軟骨分化に関わる機能解析について;BMP2情報伝達系におけるMEL1の機能解析として、SMADタンパク質との結合能力、細胞質と核の局在解析、その他タンパク質結合の違い、細胞内での修飾の違いと局在の違いについて、一つ一つ検討を行う。またRUNX2の転写調節機構についてプロモーター活性を含め、機能解析を進める。2番目として、MEL1コンディショナルノックアウトマウスの作製について;コンベンショナルノックアウトマウスを構築したところ、ホモ欠損マウスは胎性致死であることが明らかとなった。そこで、MEL1遺伝子の役割を更に解析する為に、コンディショナルノックアウトマウスの構築を開始した。本マウスにおいて、各種Creマウスを用いて、造血、骨形成等における影響を検討する予定である。また、表現形の再現確認を目的として、現在、異なるES細胞由来のノックアウトマウスの再構築を進めている。3番目としてMEL1とSKIの関連性についての検討について;我々はMEL1とSKIが複合体を作る事を既に報告しており、この二つの遺伝子が1p36欠損症候群の発症に関わっていると考え、SKI/MEL1の二重欠損マウスの構築を進めている。またin vitro実験においても1)の実験系を基盤として、SKIの関与を検討するため、過剰発現系、shSKI導入系を骨軟骨分化系に導入し、MEL1と共にその関与の検討を行う。
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