研究領域 | 多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
25118721
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
古川 雄祐 自治医科大学, 医学部, 教授 (00199431)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / ヒストン脱メチル化酵素 / T細胞性白血病 |
研究概要 |
Lysine-specific demethylase 1(LSD1)は、ヒストンH3のlysine-4/lysine-9を脱メチル化する酵素で、HDACと転写抑制複合体を形成し、例えばNotch標的遺伝子の転写抑制に働くことが示されている。2008年にRosenfeldらは、LSD1が染色体構造をダイナミックに改変し、別々の染色体に位置するプロモーターを会合させ、転写を複合的に調節していることを報告した。申請者らは、造血幹細胞にDNA二重鎖切断部位が惹起されると、切断部位からの転写を抑制するためにLSD1複合体がリクルートされるが、LSD1に質的・量的異常が存在すると染色体転座が誘導されるという仮説のもとに本研究を開始した。 まず種々の正常造血細胞と白血病細胞にてLSD1の発現をスクリーニングし、正常造血幹細胞では発現が低レベルに抑制されており、前駆細胞から成熟細胞で誘導される傾向を明らかにした。さらに白血病細胞では全般に発現が亢進しており、とくにT細胞性白血病にて発現が最も強かった。 以上の結果から、正常造血幹細胞では抑制されているLSD1が強発現すると白血病を発症するという仮説を立て、その直接的な検証のため、造血幹細胞・前駆細胞特異的にLSD1を強発現するトランスジェニック・マウスを作製した。このマウスにおいては、造血幹細胞の自己複製の亢進とT細胞系へのプライミングが認められ、放射線照射によって高率にT細胞性白血病を発症した。LSD1の強発現は白血病の発症におけるfirst hitとして働くことが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
造血幹細胞・前駆細胞においてLSD1を強発現するトランスジェニック・マウスを作製し、期待どおりに白血病が発症することを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
造血幹細胞・前駆細胞においてLSD1を強発現するトランスジェニック・マウスと白血病原因遺伝子改変マウス(BCR-ABLトランスジェニック・マウスやp53欠損マウス)と交配し、白血病発症のメカニズムを詳細に解析する。またLSD1阻害剤など分子標的薬の有効性の確認にも応用する。
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