公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
(1) 骨髄細胞をin vitroで種々のサイトカインの組合せで培養すると、IL-27+SCF(幹細胞因子)を用いた場合2ヶ月以上に渡り増えてくる細胞があることがわかった。そこで、まずこの増えてくる細胞が何であるかを調べるために、この増えた細胞を種々の細胞表面マーカーで染色しFACS解析を行うと、この増えた細胞は主にc-Kit陽性細胞とCD11b陽性細胞の大きく2つからなっていた。さらに、この内c-Kit陽性細胞が、IL-27+SCF刺激で増殖し、さらにDCに分化誘導させるGM-CSF+IL-4で培養するとCD11c陽性未熟DCに分化することがわかり、この細胞がMHCクラスII/M-CSFR陽性のミエロイド系前駆細胞であることが示唆された。次に、骨髄細胞の中でどの細胞集団がIL-27+SCFに反応しているかを調べると、いわゆるLSK(Lineage陰性c-Kit陽性ScaI陽性)細胞のみが強く反応しており、一方GM-CSF+IL-4は、LSK細胞の他にもいくつかのミエロイド系前駆細胞にも反応しDCに分化誘導した。次に、LSK細胞をさらに詳しく調べると、より未分化なCD34陰性CD150陽性の長期造血幹細胞(LT-HSC)のみが強く反応していた。(2) IL-27を血中に高発現しているトランスジェニック(Tg)マウスの骨髄細胞を野生型マウスと比較すると、上記のin vitroの培養系と同様に、LSK細胞が顕著に増え、この細胞をSortingしin vitroでGM-CSF+IL-4で培養するとCD11c陽性未熟DCに分化することがわかった。次に放射線照射したIL-27TgマウスにGFP-Tgマウス由来骨髄細胞を移植すると、元のIL-27Tgと同様にLSK細胞が顕著に増えてきた。以上より、IL-27はLSK細胞に作用しミエロイド系前駆細胞に分化誘導することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ計画通りに進行しており、おおむね順調に進展していると思われる。
(1) IL-27の作用機序とシグナル伝達機構の解明:IL-27の下流のシグナル伝達分子としてSTAT1とSTAT3のどちらが重要であるかを、STAT1とSTAT3の欠損マウスを用いて明らかにする。さらに、DC分化に重要な転写因子PU.1とGfi1の発現がIL-27刺激で誘導されるかや、siRNAによるノックダウンの効果などを調べ、これらの転写因子の関与を明らかにする。(2) IL-27投与によるHSCの細胞周期への動員の検討:細胞周期でG0静止期の細胞は染めずG1期の細胞のみ染める蛍光色素Pyronin Yを用いて、IL-27蛋白をマウスに投与後、HSC中の細胞周期のG1期に入っている割合の増加効果を調べる。精製した造血幹細胞分画LSK細胞をIL-27を含む各種のサイトカインでin vitroで刺激後、細胞増殖と分化の程度をFACSを用いて詳細に調べ、IL-27の増殖誘導能が高いことを明らかにする。(3) 感染による造血幹細胞の活性化と末梢への動員の際の役割:マラリア感染をモデルに用いて野生型マウスおよびWSX-1欠損マウスに感染後、造血幹細胞および前駆細胞の末梢への動員におけるIL-27の役割を明らかにする。IFN-gは、既に造血前駆細胞の末梢への動員に重要であることが報告されているので、IFN-g欠損マウスを用いて、IL-27発現誘導を比較し、IL-27がIFN-gの下流のサイトカインである可能を検討する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
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